小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

桜咲く4月はおめでとう?

INDEX|1ページ/1ページ|

 

大学合格サクラ咲くおめでとう!
田舎で田舎で田舎な地元から、晴れて上京都会生活!親の目がないぜやりたい放題ラッキー!これで長年の鬱屈から解放される……。と思ったのに。
「あ、俺も桂と同じ大学進むから。どーせなら一緒に暮さねえ?地元と違って家賃とか馬鹿高いだろ?一緒に住んだら負担半減だしな」
そーいってオレに住宅情報雑誌をホイと手渡したのは、オレが生まれてこのかたずーーーーーーっと兄弟のように過ごしてきている尚である。オレはそれを投げ返す。一緒に暮らす?冗談じゃねえ!
尚とオレは生まれた時から今まで三日と離れたことがない。言葉通り常に一緒、何するのも一緒である。家に帰ってからも一緒学校も一緒、部活も一緒。家族なんかよりもずーっと長い時間そばにいる。まあいわゆる幼馴染みっていう関係だ。うーんと、まあそのだ。付け足すのなら……オレの一方的な片思いも相手でもあったりする。
その尚がオレに言った。一緒に暮らそうって冗談みたいなその言葉を。
……知らないってのはある意味罪だな。オレの気持ちとか知ってたらそんな馬鹿な発言はしねえだろ。あー……。
オレが何で親を説得してまで地元離れて遠くの大学合格したと思ってんだよっ!
オレの長年の鬱屈の原因はオマエだオマエ、尚のせいだっ!
……田舎な地元には出会いがない。小学校中学校共に全校生徒数二十人もいなかった。高校は二時間かけて通学した。それでも一学年二クラスしかねえ。こんな状況で出会いなんかねえ。うっかり幼馴染みの男に惚れてしまったオレに未来もない。だから、大学生になったなら、こんなクソ田舎から出てだな、綺麗なお姉ちゃんと大量にお知り合いになってオマエへのしょーもねえ恋心なんか忘れてやろうとしてるってーのに。
……なんでその元凶のオマエと二人暮らしなんかしなきゃならねえんだよっ!
オマエ、身の危険とか感じる能力皆無じゃねえかっ!
なんでオレの近くに寄るんだよっ!
カモネギしょって鍋もコンロも用意してさあ、食えってそういう意味かよオレとオマエの二人暮らしって!
考え直せちょっと待てそれだけはやめておけっ!!!
なのに……。
「あらあ、そうねえ。尚ちゃんが一緒に暮らしてくれるんならかーさん安心よ。ウチの桂に独り暮らしなんかさせるの本当は心配で心配で心配で……」
かーちゃん、ちょっと待て、オレ一人でも生活くらいできるっつの!
「そうねえ。尚一はしっかりしているとはいえこんな田舎から都会の大学に行かせるの本当は私も不安だったのよー。桂ちゃんと一緒なら心強いわ~」
尚の母ちゃんも……ちょっと待て。
「そうよね。アンタ達もアルバイトもするだろうし奨学金とかももらってくれる予定だろうけど、やっぱりねえ。二人で暮らしてくれると何かと安心だしお金もね、けっこうかかるだろうしねぇ……」
かーちゃんたち、ちょっと待てってオレは言ってる。
「だろ?な、桂。どうせ俺たち同じガッコ行って同じよーな授業とって、ついでにどうせ近所に住むんなら一緒の方が合理的だろ?どうせお互いにお互いの部屋入り浸る気がするし、それに俺がいないと何時まで経っても桂の部屋キタネエだろ?ウジ湧く前に一緒に住んじゃおうぜ?オレと一緒ならきれいな部屋キープできるしな」
「あらま、またアンタ尚ちゃんに部屋の掃除なんかさせたりしてんの?」
「させてねえよっ!いつオレがさせたっつーのっ!」
「桂の部屋はキタネエじゃん……。あ、大丈夫ですおばさん。俺が座るスペース確保するくらいしか桂の部屋掃除しませんから。後はコイツぶん殴ってでも部屋かたずけさせますし」
かけてる眼鏡なんか押し上げて、優等生ぶって言うセリフにむかむかする。だけど、結局俺が尚を怒鳴る前に、俺のハハオヤと尚の母ちゃんもすっかりオレと尚が一緒に暮らすって方向に傾いてしまったあーあ。
大学合格おめでとう、つきましてはこの田舎から都会へと出るわけですが、オレこと岡嶋桂と西條尚一は二人暮らしを営むことになりました。
普通ならあー安心、っていうところだけろうけどさ。だけどさ。……オレは、大学生になったらばしばしコンパとか参加して彼女作ってこんな幼馴染みの男への恋心なんか忘れるつもりだったのに……。忘れるつもりだったのに……。なんでオレの気持ちなんか欠片も気が付いていないオマエから二人暮らしを提案されなきゃなんねーんだよっ!オレがうっかりとち狂ってオマエ押し倒して一線越えたらどーすんだっ!こんな田舎の人口少ねえところで、向こう三軒両隣どころか町内の皆さまと家族ぐるみのめっちゃ濃い近所付き合いしているところでオレとオマエがホモったら、即座に知れ回って母ちゃん達もこんなところに住めなくなるぞ。それでもいいのかどーすんだっ!嫌だろうっ!ご近所の皆さまにホモだゲイだって後ろ指さされるのは冗談じゃねえっ!オレのこの気持ちがおかしいんだ。さっさと忘れるつもりなんだ。なのにその元凶のオマエと暮らしてどーすんだよっ!
ああああああああああああああああああもうっ!
何がサクラ咲く合格おめでとうだ。
四月になって大学生活。別の意味でピンクモード全開だ。めくるめく快楽の世界に飛び込んじまったら……お先真っ暗になるじゃねか!

オレの葛藤なんか知らねえで、母ちゃん達と一緒の住宅情報誌めくる尚がめちゃめちゃ憎い。可愛さ余りまくって憎さ百倍。
まさかとは思うがオレの理性を試しているんじゃねえだろうなっ!
頭を抱えるオレを横目に、尚の野郎がふっと笑う。


その笑いの意味を知ったのはもう少し後。つかついさっき。
何も気が付いていないふりの尚が実はオレと両思いで。ワザと同じ大学受けて合格して、ワザと母ちゃん達に二人暮らしを提案して。
……何気ないふりして虎視眈々とオレに告白するチャンスをうかがっていた尚を知るのはサクラが散る頃でした。つまり二人暮らし初めてめっちゃすぐだっ!
しかもオレが押し倒された。
チクショウ、マジでケツがいてえっ!
……嬉しいんだか実に微妙なオレの上に、開いてる窓から桜の花びらがひらりと舞い落ちてきやがった。
青い空は晴れていて。
昼間っからオレらナニやってんだあーあもう!

オレは隣でグーすか眠っていやがるこの馬鹿をがすっとぶん殴ってから、ふてくされて布団に潜った。

桜咲いて桜散る。
これがこの世の道理ならオレと尚がくっついたのも仕方ねえということか。

あーあ、チクショ、おめでとうオレっ!!



- 終 -