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南の島の星降りて

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マンションは静かに見守る


時計を見ると2時半をまわっていた。
「俺のことを好きじゃないのに、好きか?なんてもう聞くなよな・・」
腕の中の夏樹にちょっと怒って言っていた。
「そんなことないよ。けっこう好きなんだけど・・」
「そうかねー そうは思わないけど・・・ま、いいや」
体を離してソファーに座り込んだ。缶ビールをそのまま取って一気に飲んだ。
コーヒーを飲んでる気分ではなくなっていた。
夏樹もグラスのビールを一気に飲んでいた。
そしてソファーに座り込んだ。

しばらくして、夏樹はシャワーを浴びたいというので、風呂場に案内した。
夏樹が出すシャワーの音は泣いているようでなんかイヤだった。
出てきた夏樹に兄貴のTシャツと短パンを探して貸してやると、着替えた夏樹は顔の黒い男の子みたいだった。それはそれで、とてもかわいかった。
「寝ちゃっていいよ。そこあけると奥にベッドあるから」
「うん。ありがとう。ちょっと、寝かせてね」
馬鹿でかいベッドに案内すると、驚いていた。
「なに、これ」
言いながら、喜んでベッドに夏樹はもぐりこんでいた。
俺はちょとだけ笑って風呂場に向かった。説明はメンドウだった。

風呂場で、いろんなことを考えていた。
「俺と付き合う」ってちゃんと夏樹は隼人さんに言えるだろうか・・
で、その後は俺はどうすりゃいいんだろう・・
なんか、考えたけど、もう、それだけで混乱していた。
隼人さんは俺になんか言うだろうなぁあ・・
酔いはさめてきていたけれどけど、頭はグルグルとめまいが起こりそうだった。

風呂場から上がっ電気を消しててソファーに横になった。
とりあえず、もう、なるようになるか・・って思っていた。
あまりよく知らない夏樹にどうして、俺はこんなことをするんだろうって思っていた。でも、それで済むなら仕方ないやと思っていた。
後で、付き合っている直美にはどう言えばいいのかなんて考えも浮かばなかった。

「ねー。劉ぅー」
隣の部屋からもう、寝いっていたのかと思ってた夏樹の声だった。
「なにー」
ソファーの上から答えた
「こっちで寝ないのー」
「うん。俺こっちでいいからー」
電気を消したマンションに二人の声だけが飛び交っていた。
「嫌いになっちゃうよーこっちにこないとー」
「いいよー。嫌いでー」
静かなマンションにおかしな会話が続いていた。
少し時間があいて、夏樹の声がした。
「劉ぅー、明日、隼人に会ってくるね。ちゃんとしてくるね」
しっかりした声だった。
「うん。しっかりね」
それからは一切話をしなかった。

兄貴のマンションは静かに夏樹を見守っていた。

作品名:南の島の星降りて 作家名:森脇劉生