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フレンドボーイ42
フレンドボーイ42
novelistID. 608
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ゲリラ豪雨

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有沢が会社に向かうころ、こうへいくんは階段をあくびをしながら下りてくる。
 「いってらっしゃい、パパ」
 「行ってくるぞ」
 有沢がいなくなるとこうへいくんは虫取り網を持ってくる。
 「あらあら、朝ごはん食べてから行きなさいよ」
 そういわれてこうへいくんは食パンをかじる。
 「もう宿題終わったの?」
 「きのうおわったよ、ママ」
 「そう。ならいいけど」
 「おわった。いってきます!」
 「おにぎりぐらい持って行きなさいよ」
 「はーい」
 こうへいくんは別にせかされてもいないにもかかわらずタタタッと駆けるように外へ出る。
 「まったく」
 そういいながら皿を片づける。

 こうへいくんは一日中カブトムシやセミを追っていたが、ついに何にも見つけられなかった。彼はへとへとになって持ってきたお金でジュースを買って飲みながら、ベンチに腰かけていた。
 「あ、もうおひさまがしずんでる」
 こうへいくんはもうすっかり夕方になったのだと気付いた。このままでは母親にしかられてしまう。彼は帰ろうとした。すると、目の前に段ボール箱があるのに気付いた。中には白い子犬が入っている。
 「なんだろ」
 こうへいくんが近づくと、犬は少し吠えた。
 「なんにもしないよ」
 こうへいくんは子犬を覗き込んだ。
 「どれどれ」
 こうへいくんは少しの漢字なら読めたが、それでもやはり子供だった。
 「…「このこいぬを、?ってください」…?」
 ただこの子犬はずっと縮こまって弱々しく泣いている。
 「かいぬしさんはどうしたのかな」
 こうへいくんには「拾」という字は読めなかった。よってその貼り紙から、無責任な飼い主が飽きた結果その哀れな子犬を何のえさも与えず捨てたという事実を理解できるほどには成長していなかった。
 すると、急に雨粒がこうへいくんと子犬をたたいた。
 「あめだ」
 その雨は急激に強くなっていった。こうへいくんはまだこのような言葉は知らないはずだ―「ゲリラ豪雨」。こうへいくんは雨宿りできる場所を探して駆けこもうとした。その時、振り返ると子犬が泣いているのを見た。
 「いっしょにおいで」
 子犬を抱いて近くの自販機スペースの屋根に入る。
 <ピカッ ゴロゴロ>
 彼にはこう見え、聞こえるのだろう。
 「わーっ」
 彼は子犬を抱きしめていた。
 「だいじょうぶ?」
 犬に人間の言葉が理解できるのかどうかはわからない。ただこうへいくんが前の飼い主よりも優しげであることは、犬でなくても理解出来るだろう。
 こうへいくんと子犬はずっとそこにいた。
 「こわいね」
 彼はずっとそこにいると、ふと大人がやってくるのが見えた。
 「…パパ」
 「誰だろうと思ったらお前か。どうしたんだ」
 こうへいくんの前には、有沢が立っていた。
 「雨宿りか。その犬はどうしたんだ?」
 「そこではこにはいってたの」
 「どれどれ…」
 有沢はすぐにそれが哀れな捨て犬で、こうへいくんと一緒にいて安心している今の状況まで洞察ができた。
 「その子犬も連れて帰るかい」
 「いいの?」
 「その犬にとってもその方がいいと思ってな」
 「でもこのこのかいぬしさんは」
 「その犬には飼い主さんはいないんだ」
 「へ」
 「お前の友達にすればいいじゃないか」
 「ママおこらないかな」
 「パパが何とかしてやるさ」
 有沢はそういってこうへいくんと子犬に傘を差し出した。
 「パパのかさは」
 「パパは鞄でいいよ」
 そういって有沢は、こうへいくんと子犬を連れて、雨の中歩き始めた。
作品名:ゲリラ豪雨 作家名:フレンドボーイ42