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フレンドボーイ42
フレンドボーイ42
novelistID. 608
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非科学・信条・存在証明・否定不可能

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 「今日のラッキーアイテムは〜」
 くだらない。じつにくだらない。くっだらねえーってあいつなら絶対言う。彼は非科学的な存在がいるであろうことは認めるが、またこう言うのだ。
 「常人の前にでてくるはずがないだろ」
 その信条の前では、かの7人いれば1人引っかかると言われる巨大カルト団体もたじたじだった。地方幹部がやってきてもスルーしてしまう。それほどに彼は宗教団体にとって驚異の存在だった。そして宗教にはいっている人を捕まえてはこう言うのだ。
 「あなたが幸福なのはあなたの努力と周りの助けのおかげです。姿が見えない連中なんかより、まずは家族や友人を感謝すべきですよ」
 彼は当然宗教団体からマークされていた。だがそれでも彼は怖がらなかった。やっちゃん関係者に近い服装の男がきても突っぱねつづける。
 それ故彼は占いも信じなかった。だが彼は占いはいいビジネスだと語った。
 「コツさえうまくつかめれば絶対にはずれない予言ができるんだ」
 「それは必ず当たるってことじゃないの」
 「…違うなリカちゃん。当たるのとはずれないのでは大きな差がある」
 「どういうこと」
 「あなたは近い将来、今はまだ何とも思っていない男の人の笑顔をみるでしょう。その人がもしかしたら運命の人かもしれません」
 「それがどうしたの」
 「運命の人だったらどんな無愛想なやつだって笑顔になるだろ。マンガやドラマじゃあるまいに、ずっと無愛想なままのやつがいるかって言うんだ。しかもかもしれません、って完全に逃げてるし。たとえ違う人だったとしてもかもしれないんじゃ当たっているのかはずれているのかすらわかんないし」
 「ああ…」
 「あと、あなたが努力していれば必ず出会いがきます、とかさ」
 「努力していることと出会いは別物だって言いたいんでしょ」
 「100パーセント切り離すことではないけど、99パーセント関係ないことだよね」
 そんな彼は、しかし非科学には興味があった。そして彼は理系のアドバンテージを有効活用するのだ。
 「非科学は科学で証明できないからこそ非科学なのであって、科学でいると証明してしまえば非科学じゃないんだ」
 「それはどういうこと」
 「いるかどうかの証明。いるっていってしまえばそれは見えなかろうがあることになるんだ。原子とかクオークとかさ」
 「いるって証明できなかったらいないってことになるわけだ」
 「…違うんだなリカちゃん。いない証明をしないといないことにはならない」
 「え」
 「いないことがはっきりと言える場合に、それはいないといえるんだ。たとえ現実には見えていてもね」
 「じゃあいる証明で否定されて、いない証明でも否定されたら?」
 「どうなのかわからない、っていうことになる。そもそも証明は肯定はあっても否定はない。あるとするならこの情報ではその結論に持ってゆけない、だね」
 「情報不足ってこと?」
 「そう。逆に言えば少なくても情報に隙がないなら証明において命題は満たされた、といえるわけ」
 「じゃあネッシーがいるかどうかも」
 「わからない、ってことさ。夢があっていいよね」
 「というか夢だらけじゃんそうしたら」
 「うん」
 彼はそういって笑った。

 理科・科学。その世界ではまだまだ証明できていないことは山ほどあるのだという。神様がかりにいるとしたらそれはそれは綿密な計算をしているに違いない。だとしたら…
 「人間なんかにその教えが理解できるはずないよね」
 「それをいったら彼らがかわいそうだ。それが商売なんだから」
 「信者の人を次々に還俗させておいて何言ってるのさ」
 「ははは…僕らにできることは、教えを守ることでも信じることでもない」

 彼は天を見上げてこう言った。
 「生きていること、その奇跡に感謝することだろ」