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きらきら、きらきら。

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「おい、修平」
「・・・んだよ」

机に突っ伏したまま、俺は視線だけを持ち上げる。
想像通り、秋也が向かいの席に座って頬杖をついてるのが見えた。
地毛だと言い張っている(多分少し色は抜いてるだろうが、言い張れるレベルだ)焦げ茶の髪が、風に揺れる。
気持ちいい昼休みに、こいつの顔なんざ、見たくもねえ。

「いいのか?呼んでるぜ?」
にやにやと笑うときの秋也に、いい思い出がねえ。
大体、こいつの「呼んでるぜ」は、良くて先公の指導室か、悪けりゃ「このシマは俺のだ」とか言い張る馬鹿な連中の群れだ。
まあ、どっちにしても、俺にとっては歓迎できるもんじゃねえ。
(どっちも懲りねえなとは思う。入学当初からキンキラキンにブリーチしてっし、この色だって先週染め直したとこだ。馬鹿も同じで、何回ブン殴られりゃ気が済むんだよ)

「ほっとけ、どうでもいい」
午後の日差しに、思わず欠伸が漏れた。
どうせ、どっちも放っておいてもつつきに来るのは目に見えてる。
わざわざ出向く必要なんざねえだろ。
「へえー、さっすがクールだねえ。田所くんは」
「心にもねえこと言うな。あと、気色悪い。名字呼びすんな」
笑い声が、頭の上から降ってきた。
顔なんざ見なくてもわかる。
「爽やか」とか言われてる顔で、笑ってんだろ。
気持ちわりいってのに、なんでかあの顔はウケるんだから、世の中おかしい。

「でも、ほんとにいいのか?」
「いいつってんだろ、眠ぃんだ、俺は」
このためだけに、窓側の席を毎回取ってんだ。寝させろ。
少しずつ眠気でぼけてきた俺の頭に、あいつは冷や水をぶっかけてきた。


「呼んでんの、倉橋先輩だぞ」
「なっ?!」
反射的に立ち上がって、廊下の方へ視線を向ける。
ドアのところに寄り添うように立ってるあいつを見つける。
「修平!」
あいつは、にこにこと笑って俺の方を見ていた。
いつから見てたんだよ。まさか、「どうでもいい」とか聞こえてたか?
やべえ、おい、やべえ。

「かれこれ10分くらい、待ってるけど?」
「それを早く言え!この馬鹿野郎!」

自分の席を半分蹴飛ばして廊下へと向かう。
あいつは、やっぱり、にこにこ笑って俺を見ている。
寝癖があるような気がして、髪を撫でつけた。

「ひなた」
「おはよう、修平」



名実がここまで一致してる奴なんざいねえだろ。
昔から、あいつは、文字通り俺の日向だ。


・・・秋也の前で言ったら大笑いされるだろうから、言わねえけど。
作品名:きらきら、きらきら。 作家名:ash