いぬじに
イヤフォンで聴く、高く突き抜けるドラムのスネアの音。
スカートを短めに、裸足に履き潰したローファー。
平日、真っ昼間。制服。
私は歩いていた。
耳に打ち込まれるのは、重いベース、引っ掻き回すギター。
そして下品な言葉で絶叫、絶叫、絶叫、絶叫。
ビルに反射する太陽眩しく、アスファルトの強い照り返しは太ももにまで届く。
スーツを着た男性のほとんどが、すれ違い様に私を見る。
不良学生を注意しよう、などとは無縁のどろどろとした視線だった。
ボリュームをあげた。
伴い、演奏は激しくなる。
信号待ちをしていた。
無茶を、してみたくなった。
私は飛び出した。
黒い塊が目掛けてとんでくる。
ああ、これは間に合わないな、と思った。
私はとんだ。
周りはうるさかった。気付けばヘッドフォンは外れてしまって、私はアスファルトに横たわっていた。
血を流したかった。
しかし、流しているのは隣に倒れている男だった。
確か、私の隣で信号待ちをしていたと思う。
私は無傷だったのだ。
がっかりしていると、血まみれの男は私に言った。
「この中二病が!」