週刊少年
(なんかに似てるんだよな・・・、)
吉田の顔をじっと見ながら考える。なんだろう。一年前から思っているのにいっこうに答えは出ない。ジンジャーエールのはいったグラスが汗をかいている。
モスチキンは汚く食べ散らかされている。顔に似合わず食べ方が汚い吉田に、初めていっしょにご飯を食べに行ったときとても驚いたことを思い出した。
伏せたまつげは頬にかげをつくる。あわいオレンジの照明は室内全体を暗く見せた。なんだか内緒の気分。なにも秘密はないのだけれど。
「吉田、」
「なに?」
肩肘を突いてケータイのディスプレイを眺める吉田はこちらを見ない。影は消えない。それでよかった。それがよかった。
「時間は?」
「ああ、うん。もう行く」
パチンとケータイを閉じて、すばやくトレイを手にして吉田は立ち上がる。
「明石は?」
「俺はまだ帰れない」
「あっそ」
世の中全てのものに興味がなさそうな吉田の態度が、酷く心地よかった。ずけずけと、親切を振りかざして人の心に入ってくるタイプの人間が俺は一番嫌いだ。
「じゃあ」
「うん。また」
トレイを手に遠ざかる彼の後姿を見て、友情努力勝利を売りにしているあの週間少年誌にあるひとつのマンガの、準レギュラー程度のキャラクターを思い出した。
(ああ、あれか)