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花園学園高等部二学年の乙女達

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ガラガラガラ…


カツンカツンと先生が教室に入ってきた。
後ろには誰もいない。

(あれ?転校生は?)

和野同様他の少女たちも肩透かしをくらったような顔をした。

…彼女、入江真由美は和野たち2年D組の担任である。
ショートカットで白髪混じりの髪型だが、背が高くきつい目をしているため歳よりずっと若く見える。

そして特別厳しいことでも有名だ。

「起立、礼」

入江先生の合図で皆一斉に「ごきげんよう。今日も一日よろしくお願いいたします、先生。」と挨拶した。

和野は内心「あほらしい」としらける。


なんて馬鹿なのかしらこのこたちは!
私たち生徒が払う馬鹿高い授業料なしじゃ生活できないのに威張っている教師たち!この学園を出たという誇りが欲しいがためにいそいそと娘たちを送りだす親たち!
そしてそんなこと考えもせずにごきげんようと微笑む愚かな少女たち!


…和野は深く深く溜め息をつく。


(…それとも…考えているのに居座り続ける私たち3人が一番間抜けなのかしら。)

和野が再び溜め息をつこうとした時、入江先生がもったいぶった顔付きで皆を見渡した。

「はい、皆さんごきげんよう。それでは席に着いて。転校生を紹介するから。」


皆ハッと息を飲んで静かに席につく。

一斉に開け放したドアに視線が注がれた。



…ぱたん、ぱたんと転校生が目の前に立つ。





和野は、冗談抜きにひっくり反りそうになった。

教室が一斉に音もなく薔薇色に染まり興奮が駆け巡る。
入江先生までもが何故か得意そうに鼻を鳴らした。


「それじゃあ芳田咲君、挨拶を。」


…背の高く、まったくもって王子の様な彼はその容姿にふさわしい落ち着いたよく響く声で挨拶をした。

「父の仕事の都合で愛知から越して来ました。男一人ですが皆さん優しくしてやって下さい。」


ぺこりと姿勢よく頭を下げる。
乙女たちはくすくすと頬を赤らめ囁きあった。


小笠原朱美に並ぶ王子、遂にあらわる。


和野はにっこりと花の様に微笑んだ。