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私のやんごとなき王子様 理事長編

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 たくさんの人が浜に座って海の方を見ていて、私は胸が躍った。
 皆花火を見る為に出て来てるんだ。

『出てくれたかな?』
「はい」
『僕はこちらから花火を見るつもりなんだ。一緒に見られないのは残念だけど、こうして電話で話しながら同じ花火を見るというのもなかなか面白い趣向だと思わないかい?』
「あ……はい!」

 胸が暖かくなる。理事長は私の事を気にかけてくれている、その事がすごく嬉しかった。
 それは私と同じような気持ちではないとしても、この合宿の間で知った倉持稀彦という人間にすごく近づけたと思っているし、理事長は水原さんではなく、私を仕事の手伝いに選んでくれた。その事実だけで幸せだった。

 これ以上は望まない。望んではいけないのだ。

 ドーーーン!!

 私が目に溜まった涙を指で拭うと、夜空に花火が打ち上がった。
 藍色の空に色を広げる花火に目を奪われる。

「きれい……」

 思わず言葉が漏れた。

『本当に綺麗だね……小日向さん。僕のわがままに付き合ってくれてありがとう』
「そんな。私の方こそ、色々とありがとうございます」

 まさか本当に理事長と一緒に花火を見られるなんて思ってもいなかった。
 ほんの数日一緒にいただけなのに、私はどんどん理事長を好きになって行く。こうして話す度に、新しい理事長の何かを発見しては胸をときめかせている。

 すごいな……人を好きになるって、もしかしたらすごい力を得る事なのかもしれない。

 ふと水原さんの顔が浮かんだ。
 彼女はこの花火をどんな思い出見上げているのだろうか。
 そう思うと、少しだけ苦しくなった。