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私のやんごとなき王子様 理事長編

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 夜になっても私は生徒指導室で仕事をしていた。
 もうここでやる事はほとんどないのだけど、ミスがないかもう一度確認しておきたかったのだ。

 気付けば夕食の時間も終わっていて、食べ損なった事をお腹の虫が鳴く音で後悔する。

「あ〜あ、失敗したなあ。後で食堂に行って残り物もらおう……」

 手を止めて気分を変える為に窓を開けた。なんだか外から人の声がたくさん聞こえて来る。
 そう言えば今日は花火大会だっけ。さなぎは米倉君と出かけたのかな?
 日が落ちて少し涼しい風が外から入って来る。心地良いなと思っていると、机の上に置いていた携帯が鳴った。

「あれ?」

 母親からだろうと高をくくってディスプレイを見ずに気楽に出ると、電話の向こうから聞こえて来た声に私は思わず携帯を落としそうになってしまった。

『やあ、小日向さん。何をしているのかな?』
「り……理事、長?」

 確かに今朝理事長の部屋へ出迎えに行った時に、緊急時の為にと携帯電話の番号を尋ねられ教えた。もしかしたら何かミスがあったのだろうか?
 緊張が走った私に、理事長がふっと笑う。

『心配しなくてもいいよ。緊急という訳じゃないから……いや、少し緊急ではあるかな』
「え?」
『今、どこにいるんだい?』

 私は慌てて辺りを見回して答える。誰もいない生徒指導室。自分の居場所を改めて確認するなんて、よっぽど慌ててるんだ。

「あの、生徒指導室にっ」
『そう。一人かな? 外に出られる?』
「はい……大丈夫ですけど」

 一体どうしたのだろう。理事長の声は少し楽しそうだ。

『良かったら海の近くまで出てくれないかな? もうすぐ花火大会が始まるだろう? 君も見に行くといい』
「はい。あの、花火大会の事なんですけど、企画されたのは理事長だと言うのは本当ですか?」
『ああそうだよ。すぐ目の前で打ち上がる花火を船の上から見るなんて、楽しそうだろう?』
「はい、いつか船の上から見てみたいです」
『それじゃあ来年の夏は君を花火クルーズに招待しなきゃね』
「だ、駄目ですよ! きちんと自分の力で行きますから!」

 すごくドキドキしているのに、理事長の声を聞いているととても落ち着く。矛盾してるけど、実際そうなんだから仕方ない。