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私のやんごとなき王子様 鬼頭編

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 確かに風名君と亜里沙様の噂は無いことも無かった。だけど学校では亜里沙様には取り巻きが常にべったりくっついてるし、風名君は特定の女の子と仲良くしたりしてる姿を見たことはなかった。どっちかって言ったら利根君と二人でいることが多い気がする。

「そんな噂は聞いたことありません」

 ちょっと突っぱねるようにそう言うと、記者さんは気のない返事をした。

「そうなんだ、ドラマで共演してるし学校も同じだから付き合ってるんじゃないかって言われてるんだけど、まあいっか。それでさ、これ」

 差し出されたのは紙切れ。そこには携帯番号とアドレスが書かれていた。

「なんですか?」
「いや、こうやって知り合ったのも何かの縁かなあって。俺のケー番とアドレス。いつでも連絡してよ。キミ可愛いからさ、お友達になりたいなあって……」

 もしかしてこれって、ナンパ!?
 私が目の前で笑う男性記者に戸惑っていると、突然

「いいだろう」

 後ろから手が伸びて来て、番号の書かれた紙切れが奪われた。

「えっ?」
「わっ?!」

 男性記者と私は同時に振り返る。

「……あ、鬼頭先生」

 そこに立っていたのは鬼頭先生で、取り上げたメモ紙を確認してニヤリと口の端を上げた。
 こっ、コワイ。口元は笑ってるけど、目が笑ってない!

「あ、えっと、先生……ですか?」
「そうだ。ここの学園の保健医だ。しかしなかなかいい度胸をしている。演劇祭の取材と称して女子高校生を漁っているとはな……まあ、確かにこいつは見ての通りおつむが弱いから、騙して金になる仕事をさせるにはもってこいだろうな」
「ええっ!?」

 鬼頭先生の口から出て来る恐ろしい言葉に、私は慌てて立ち上がった。

「だがしかし、だ。確かに騙すのは簡単かもしれないが、こいつを使って何かやるというのならまず俺に話しを通してからにしてもらおうか。一応学園の生徒を預かる身なんでな。もし何かあった場合、うちの理事長とPTAは相当手強いが……それでもいいという覚悟があるならだが――」
「そ、そんな事考えてませんよ! 考え過ぎです。あっと、そろそろ船の時間みたいだ、それでは失礼しますっ!」