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私のやんごとなき王子様 鬼頭編

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「これだけ広い宿舎の中じゃなくて、どうして外のしかもあんな奥だと分かったのかと聞いてるんだ」

 これはもうきちんと答えないとまた怒られそうだと理解した私は、

「えと……なんとなく、先生は静かな所にいるんじゃないかと思って……宿舎の中は人が多いし、かといって暑い海とも思えなくて、森の方にいるかな? って――」

 思ったままを答えた。鬼頭先生は私の答えに納得したのかどうか分からないけど、

「ふうん」

 とだけ言って、丁度到着した医務室のドアを開けた。
 私も一緒に入ってさっきの女の子が先生の診察を受けるのを見守り、その子を部屋まで連れて行くことになって医務室を後にした。
 その間ずうっと、鬼頭先生のさっきの真剣な表情が頭から離れなかった。
 なんでだろう。なんだかすごく嬉しいような、切ないような、複雑な顔だった。


*****



 夕方近くになると取材のためにたくさんの人達がやって来て、あちこち取材をしてはその度に慌ただしく先生方や実行委員達が走り回っていた。
 取材もなんとか無事終わり、私は何故か取材が終わった記者さん達が、船の準備ができるまで勝手な行動をしないように彼らを監視する役目を仰せつかっていた。

 もーう、どうしていっつも「小日向、お前仕事したいだろ?」って真壁先生ったらあんなに満面の笑顔で言うかなあ。あんな風に言われたら首を縦に振るしか出来ないじゃない! ……私ってばもしかして真壁先生にいいように使われてる?
 膨れっ面でソファに座っていると、20代前半くらいの若い男の記者が私に近づいて来た。

「ねえキミ、可愛いねえ」
「は?」

 驚いて顔を上げる。
 男性記者は私の隣りに座ると、ずいっと体を寄せてメモ帳を出した。

「ここの学園は芸能関係の仕事してる子が多いけど、もしかしてキミもタレントの卵とかかな?」
「はあ? 違います」

 なんなのよ! 私のどこをどう見たらタレントなのよ。――もしかしてからかわれてる? かんべんしてよ、鬼頭先生の相手だけで疲れるのに、見ず知らずの人にまでからかわれるなんて、精神的にきついよぉ。