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きんぎょ

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『おい、口が開いてるぞ。』
はっ、として唇をぎゅっと締めた。

自分では気づかないが、最近いつも口が半開きになっているらしい。
あほ面になっているから止めなさいと注意される。
『はい、はい、』

でも、いつだって、そう注意される時は考え事をしている。
今日の献立の事・さっき交わした言葉・過去の事・未来の事・掃除・洗濯・・・
{あっ!柔軟剤きれてるんだった。買わなきゃ。}

一日はあっという間に過ぎてゆく、はっとしたら1カ月が過ぎ、え~もう?と1年が過ぎる。

『ずっと一緒に居ような。』
ぎゅっと握りしめられた右手を見る。いつの間にか骨ばった皺しわの手。
悲しいような、嬉しいような、なんだか涙が出てくる。そんなきもち。

 あともう少しで終わりかな・・・。
口が半開きになった瞬間、

グラッッ  ~  ・・・・ ~  ・・・・ ~ ・・・・


地震!!! 地面が大きく揺れる。。。 心臓の鼓動が速い。。。

 もうこの世も終わりかな・・・・・



天を仰ぐ



 今までありがとう。




しばらくして、揺れはすっとおさまった・・・







口で呼吸をした。

 パク、パク、

体も問題なくオレンジ色だ。




 ふと、外に目をやった、
 
ガラスの壁越しに見る大きな瞳。口を、に~~~っとさせながらこちらを覗いている。

『ずっと、いっしよにいようね!』
 

作品名:きんぎょ 作家名:詩乃