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私のやんごとなき王子様 真壁編

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「なんかさ、違うんだよね」
「何が?」
「真壁先生のコト」
「はあ? どういう意味?」

 チラリとさなぎを見ると、椅子に座って訝しそうに私を見下ろしていた。

「もっとこう、素早く的確に先生の手伝いが出来るって思ってたんだ……」
「……」

 黙ったままさなぎは私の話に耳を傾けてくれている。

「さっき取材の人達が来たの。そこで先生の事を中傷するような事言われて、すっごく腹が立ったのに何にも言えなかった」

思い出すだけでもまたムカムカしてくる。

「そしたらさ、先生が助けてくれたの。私が怒って文句言いそうになる寸前に、怒るんじゃなくて何て言うか……とにかく大人な対応っていうか。それで、やっぱり私みたいな子どもじゃ先生のお手伝いなんて言っても大した事出来ないんだって――」

 もう言葉が出なかった。代わりに涙がポロリと瞳から零れ落ちていく。

「美羽……」

 さなぎが悲しそうな顔でこっちを見ている。さなぎにまでこんな思いさせて、私は本当に何がしたいんだろう。

「美羽、私達はさ……そりゃ違うよ。先生達と比べたらまだまだ子どもだし、なんてったって車じゃなくって電車で現地集合だし?」

 そう言って少しだけおどけた表情を作るさなぎ。

「でもさ、そんな私達を――美羽を真壁先生は駅まで迎えに来てくれたじゃん」
「うん……」

 さなぎは私の顔を見つめると、にっこりと笑った。

「それってさ、きっと自分の生徒ってだけじゃなくて、仕事をやる上での大切なパートナーだって思ってくれてるからじゃないかな?」

 パートナー……?

「先生は生徒の事をすっごく大切にしてくれるじゃん? 真壁先生はやっぱり優しいしさ。助けてくれたのはもちろん美羽が自分の生徒ってのもあるだろうけど、でもそうじゃないっていうか――あー、もうっ! 私ってば何言ってんの!? 自分でもワケ分んなくなってきた〜〜!」

 大げさに髪を振り乱して叫ぶさなぎを見て、私は思わずくすくすと笑ってしまう。

「そうそう! 美羽は笑ってんのが一番だよっ」

 さなぎはそう言って本当に優しく微笑んでくれた。

「ありがと……さなぎ。いつもゴメン」
「なーに言ってんの! なにかあったらいつでもさなぎお姉さまに相談なさい!」