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Piovere

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いつ、誰が植えたとも分からない程時を過ごした大木の下で僕らはよく喋った。
喋るといっても、話題はどれも他愛ないことばかり。
最近雨ばかりだ。庭の花が満開になったよ。朝食べた人参は美味しかった。夏になったら海にでも行こうか。お腹が空いた。

止まない雨の中、静かな雨音を背景に、僕らはよく、木の下で雨宿りをした。
もう誰もいない世界、決して止むことのない雨は、確実に僕らの体力を奪っていったけれど。
この木の下だけは、雨が降り注ぐことはなかったから。

本当は知っていた。雨が続く理由。花が咲いた理由。朝ごはんのこと、今の季節のこと。
この世界に残ったのはもう、君と僕だけだよ。今、背を預けている大木以外は植物も、すべて枯れてしまったのだから。
食べるものも採れないから、僕もお腹が空いてきたし、なんだか眠たくなってきた。
ねえ、君は、先に眠ってしまったの?今更ながら全く反応を返さなくなった隣の人物に声をかける。だけど返事がない。僕も、一緒に寝ていいかな。

――あれ、あんなに満開だった花が、一輪も見当たらない。朝見たときはあんなに綺麗に咲いていたのに、どうして。
違う、やっぱり咲いている。さっきは見間違えたんだ。だってこんなに眠いんだから。視界がぼやけてしまうくらい。


雨、だ。おかしいな。この木はとても大きいから、雨なんて吹き込まないはずなのに。
ほら、起きて。雨が、ここにも降ってきた。危ないからもう家に帰ろう。
帰ろう。今度は家の中から、この木を見よう。きっともっと大きくなるだろうから、いつか窓枠の中だけではこの木の全景が見えなくなってしまった、そうしたらその時、またここに来よう。
……だけど、ちょっと眠い。僕も少し休んでから帰ろうかな。
じゃあ、ね。おやすみ。



unco felice……
作品名:Piovere 作家名:きじま