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せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
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まどべのことり

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 それからだんだん気が遠くなっていき、自分はもう死んでしまうのだと思いました。
「死ぬ前に、もう一度あの歌が聞きたかったな」
 
「ぴぴぴ ぴぴ ぴぴぴ ぴぴ」
 ぽかぽかと春のようなあたたかさの中で、すずめはかすかに小鳥の声を聞きました。
「ここは、天国なのかな? あったかいや」
 うとうととまどろんでいると、今度ははっきりと大好きな小鳥の声が聞こえたのです。
「ぴぴぴ ぴぴ」
 はっと気がつくと、人間の部屋でした。窓辺にはあの鳥かごがあって、小鳥もいます。
 すずめはうれしさのあまり、夢中で羽をばたつかせて、小鳥の方にいこうとしました。
「おじいちゃん、このすずめ、生きてたよ」
 男の子の声がしました。
「じいちゃんのいったとおりだろ? 疲れて気を失っているだけだって。ほら、このえさを食べれば元気になるぞ」
「なあに、これ?」
「アワタマっていってな。アワに卵をまぜて煎った特製のえさだ」
 すずめはアワタマをたくさん食べました。ほんのり暖かいそのえさは、身体や心を温めてくれただけでなく、力がどんどんわいてきたのです。
 すずめはちょんちょんとかごの方に近づいていきました。
「見て。オルゴールの方に行こうとしてる。この小鳥が好きなのかな」
「ああ、本物そっくりだから、友だちになりたいのかもしれん」
「おじいちゃんはすごいね。機械の小鳥でも本物でも何でも直しちゃうんだから」
「ゴミ置き場でオルゴールがかすかになっててな。わしには『生きたい、生きたい』って言っているように聞こえたんだ」
 すっかり元気になったすずめは、この家の近くに住むようになりました。
 毎日、男の子がオルゴールのねじを巻いて、小鳥が歌い始めると、すずめは飛んできて、小鳥と一緒に歌います。
 ほら、今日もすずめは、窓辺で小鳥といっしょに歌っています。
作品名:まどべのことり 作家名:せき あゆみ