まどべのことり
それからだんだん気が遠くなっていき、自分はもう死んでしまうのだと思いました。
「死ぬ前に、もう一度あの歌が聞きたかったな」
「ぴぴぴ ぴぴ ぴぴぴ ぴぴ」
ぽかぽかと春のようなあたたかさの中で、すずめはかすかに小鳥の声を聞きました。
「ここは、天国なのかな? あったかいや」
うとうととまどろんでいると、今度ははっきりと大好きな小鳥の声が聞こえたのです。
「ぴぴぴ ぴぴ」
はっと気がつくと、人間の部屋でした。窓辺にはあの鳥かごがあって、小鳥もいます。
すずめはうれしさのあまり、夢中で羽をばたつかせて、小鳥の方にいこうとしました。
「おじいちゃん、このすずめ、生きてたよ」
男の子の声がしました。
「じいちゃんのいったとおりだろ? 疲れて気を失っているだけだって。ほら、このえさを食べれば元気になるぞ」
「なあに、これ?」
「アワタマっていってな。アワに卵をまぜて煎った特製のえさだ」
すずめはアワタマをたくさん食べました。ほんのり暖かいそのえさは、身体や心を温めてくれただけでなく、力がどんどんわいてきたのです。
すずめはちょんちょんとかごの方に近づいていきました。
「見て。オルゴールの方に行こうとしてる。この小鳥が好きなのかな」
「ああ、本物そっくりだから、友だちになりたいのかもしれん」
「おじいちゃんはすごいね。機械の小鳥でも本物でも何でも直しちゃうんだから」
「ゴミ置き場でオルゴールがかすかになっててな。わしには『生きたい、生きたい』って言っているように聞こえたんだ」
すっかり元気になったすずめは、この家の近くに住むようになりました。
毎日、男の子がオルゴールのねじを巻いて、小鳥が歌い始めると、すずめは飛んできて、小鳥と一緒に歌います。
ほら、今日もすずめは、窓辺で小鳥といっしょに歌っています。