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飴の蜂屋・神頼み編【鉢雷鉢】

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 唇をふんぬと歪ませ、八左ヱ門はなんとかのけぞった体をこらえた。
 今までびっくりしたことで番付を作るとしたら、横綱は間違いなく目の前の三郎だ。
 しかし、突然現れた「別人」に雷蔵は驚いていない、八左ヱ門の様子を見て、ふむ予想の範囲内、といった顔をしている。雷蔵は、三郎の素顔を見慣れているのだ。だがそんな雷蔵がふと、目を細める。
「三郎の父上は、私の父の大事な友人だった。商売を始めた時も、当然のように一緒だったんだよ。それは仲が良くてね。大人なのにじゃれあうように遊んでいた。そんな二人も全盛期はまことの双忍とうたわれていたそうな」
 ああ、双忍とは忍者が二人一組で仕事をすることをいうんだよ、と付け足される。
「だ、旦那……それよりもあの、顔……」
 八左ヱ門が三郎らしき者(いや、三郎なのだろうが)におそるおそる目を合わせると真っすぐで長い前髪の間から観察するように見返してくる。きょろりと大きめな目が、隣家の喜八郎を思い出させた。
 この三郎は、これといって特徴のない、どこにでもいそう顔をしている。見たことがあるはずないのに、どこかで見たことがあるような、そんなかたち。長めの前髪さえなければ、町でも決して目立つことはないだろう。
 この顔はいったい、何なのだろう。しかし残念なことに……
「うん。それは後でね」
 雷蔵が問答無用の態度だった。三郎に笑われる。ええい、見慣れない顔は気になるが、仕方がない。置いておくこととする。
 雷蔵の話はつづく。
「職をなくした二人は、妻を伴い、やがて江戸にたどり着いた。ここで私の父は商売に本腰を入れ、逆に三郎のお父上は副業として忍の技が活かせることを始めた。それが、うちの裏にある神社だ」
 今度はきちんと手を挙げて、八左ヱ門は遠慮がちに訊いた。
「えっと、俺には、その神社っていうのがピンときやせん。三郎にも色々言っていましたが、うちとあの神社は、一体なんの関係が……」
 ここで初めて雷蔵が言葉につまる。
「八左ヱ門には謝らなければならないね」
「そ。そんな。旦那が謝る必要なんて……」
 次第がわからなくても、八左ヱ門は当然そう返す。
「違うよ……私は……」
 雷蔵がもぞもぞと尻の下の足を動かす。