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飴の蜂屋・神頼み編【鉢雷鉢】

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 前回同様、八左ヱ門はあっさりまかれた。方法はこの際、悔しいので話さない。
 しかし今度は中継地点に当たりがついている。兵助さまさま。先回りをし、三郎を待つことにした。
 昼間の吉原の門は硬く閉ざされている。人通りもまばらだったので、茶店で団子を頬張りながら待機。天気はさほど良いとは言えないが、風は気持いい。
 ほどなくして三郎を見つけた。袷の中に手を入れて、首筋を撫でている。さあどの方向へ行くかと見張っていると、なんと、彼は一直線に八左ヱ門の元へ歩いてきた。硬直する八左ヱ門の前で、三郎は目がすわり、ため息をついている。
「もう、面倒くさい。あんた、尾行がへたすぎる。才能ない」
「……言われなくても分かってる」
 ぶわりと汗が吹き出る。耳が熱い、唇が尖ってきた。ばればれだったらしい。
「まだあの兵助とかいうのが向いてるね。あれはうまい。気配は感じるけど、たまに目がいくつもあるみたいに……まあいいや」
 なにをかぎ回っているかしらないけど、と前置きして、三郎は団子を一串横取りした。俺のよもぎ団子。
「ついて来られると迷惑なんでね。なんとかしてやめてもらいたい」
 どうも今日の三郎はよく喋る。それが余計あやしいというものではないか。
「なぜ。お天道様に顔向けできないことでもしてんのか」
「するわきゃねえだろ」
「……おやっさーん、勘定ここに置いておくよ」
 成り行き上、連れ立って店を出た。

 さて、三郎の最大の失敗は、まくことを面倒くさがり、八左ヱ門に直談判したことだ。それと、八左ヱ門の諦めの悪さを見誤っていた。
「俺、男と手繋ぐ趣味はないんだけど」
「俺もねえよ。でも、逃げるだろ」
 諦めの悪さ、と言っても種類がある。八左ヱ門のそれは、自分の恥も外聞も捨てきれるからこそ強力なのだった。がっしりと合わさった手を見た、行き交う人びとのうわさ話など気にしない。ただし、些か体は腕から離れ気味だった。
「だめだ、あんたを雷蔵だと思おうとしたけど、無理だ。俺の雷蔵はもっと甘くていい匂いがする……お前は鰯油臭い」
 言われて思わず腕のあたりをかいだ。確かに、節約を美とする八左ヱ門は、高価な蝋燭の代わりに鰯油を使っていた。匂いはきつい、しかし昨日は早く床についたし、今はまだ昼である。
「匂いなんかするわけないだろうが。それと旦那のは砂糖の匂いな」