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飴の蜂屋・神頼み編【鉢雷鉢】

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 八左ヱ門が番頭に疑惑を相談すると、急いた仕事はないからと休みをくれた。
 考えた末、暇を使い、昼間出歩く三郎の後を尾けることにした。なんてことはない。他に何をすればいいか分からなかったのだ。
 江戸の大通りは人だらけで絶好の尾行日和。春の陽気にちょいとそこまで脚を伸ばす者も多いのだろう。八左ヱ門が言える立場ではないが、仕事もせずに気楽なものだ。
 三郎は行く先々でちょいと力仕事を手伝っては銭をもらい、今夜の飲み代を稼いでいるようだった。先日の喧嘩の仲裁といい、細く見えて、三郎は存外腕力があった。
「ありがとうねえ三郎ちゃん。米をつかないだけで腰がだいぶ楽なんだけど、やらないわけにもいかなくてねえ」
「分かるよ、せっかく江戸に住んでりゃ白い米が食いたいもんな。腰、お大事に」
 顔見知りらしい長屋の女は代金を渡した。まいど。もらった小銭を、ちゃりんと空に上げながら、三郎は去って行った。手ばやく長屋に滑りこみ、女に三郎との関係を聞き出した。
「あらやだ何調べてるの? 別に浮気とかじゃないわよ。私は亭主と仲良いんだから」
「そりゃ素敵だね。で、あの男、いつも来るのかい」
「たまにね。あの通り、力持ちだろう? 助かってるよ。ああ、初めて来たのはね、ううん、本当に最近のはずだよ。でも人懐っこいからね。ここらじゃ人気さ」
 周りにいた女たちも同様に頷いた。正直、金に執着する極悪非道な男という評価が出てくることを期待していたのだが、そんな話は微塵も出なかった。
 もうすぐ太陽が真上までやってくる。朝早くから気を張って歩きっぱなし。体力自慢の八左ヱ門も、さすがに疲れてきた。三郎はあれだけ働いたというのに、まだどこでも休んでいない。それでもしゃんとしているのだから、なかなか見所がある。
「やっぱりただの穀潰しじゃないな」
 ねっとりした飴をかき回す作業は力がいる。あれだけ筋肉がついているなら、だいぶ戦力になりそうだ。今度手伝わせようと思いを巡らせて、頭を振った。い けない、ボロを見つけようとしているのに。余計な情は捨てなければ。何かを企んでいるのだったら、早いとこ岡っ引きに御用してもらわなければいけない。
 進んだ道の突き当たり、三郎はようやく狐の描かれた屋台に入った。いなり寿司である。