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私のやんごとなき王子様 利根編

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「こちらでございます」
「わあ……可愛い!」

 ダイヤとピンクダイヤで小さな花を模したその指輪を見た瞬間、美羽の顔が輝いた。
 俺はその指輪を手に取り、美羽の左手の薬指にはめた。

「―――ぴったりだ」
「えっ!? 駄目だよ! こんな高価な物、もらえない!」

 慌てて指から指輪を外そうとする美羽の手を止め、俺はずっと言おうと思っていた言葉を告げた。

「待って、外さないで……美羽、俺の力じゃ高価な物は買ってあげられないけど、それでも気持ちだけはここにある全ての宝石を買ったって足りないくらい君を喜ばせたいって思ってる。もちろん君が宝石なんていらないって言うのは分かってた。でもね、これだけはどうしても受け取って欲しいんだ。―――こんな俺だけど……これからもずっと一緒にいて欲しい。美羽が学校を卒業して、俺が華道家として一人前になったら、その時、俺と……結婚して欲しい」 
「華月……君―――」

 涙を目に浮かべ、それを必死で我慢し俯いた美羽は、俺がはめてあげた指輪を握ったまま何度も頷いた。

「はい……」

 俺のプロポーズにそう答えながら。

「ご婚約、おめでとうございます」
「ありがとうございます」

 店員の男性はそう言って微笑むと、美羽にあげた指輪と同じデザインのネックレスを出してくれた。

「これは、私からのプレゼントでございます」
「あ……ありがとうございますっ!」

 美羽はその可愛らしいネックレスを店員から受け取り、とても嬉しそうに頭を下げた。
 
 俺の可愛い美羽。
 大切にするよ。ずっと、永遠に―――





 私のやんごとなき王子様 ――利根編――   了