〈ユメ〉夢詩〈ウタ〉
四の夢~祈る人、見守る人のコト~
白い建物の中で、少女は祈りを捧げていた。
襟元や裾に金の縁取りがしてある白いローブ。その下には、いわゆる修道女が着るような服を纏っている。
跪く彼女の傍らの机には、分厚い書物と、透明な宝石のついた金縁の指輪が一つ。
机の傍には、彼女の背よりも高いであろう、てっぺんが十字架の形をしており、宝石がちりばめられた装飾豊かな杖が置いてある。
彼女の二つに結われた髪は金色。頭をたれ、手に金色の十字架のロザリオを持ち、一心不乱に祈っている。目の前の祭壇に置かれている、白い女神の像に向かって。
そうしているうちに、きぃ、と軽く扉が開く音か響いた。
その音と同時に、少女は祈りを止めた。
ゆっくりと開かれた瞳の色は、草原と同じ鮮やかな緑色。
立ち上がって振り向いた彼女の目に、戸口に少し、罰の悪そうな顔をして立っている少年が映った。
黒の髪の毛がつんつんと立っており、所々に赤のメッシュが入っている。黒地に紅い十字架が大きく描かれたTシャツに黒いズボン、白のスニーカーをはき、腰には銀色に光る短剣が一本。銀の鎖で巻きつけてある。紫色のローブを翻しながら、少年はすまなさそうにいった。
「ごめん。邪魔しちゃったかな?」
「ううん、一段落、終わったところ」
詫びる少年に明るく答えた少女の声は、どことなくアクセントがおかしい。
「まだ続く?」
「うん、もうちょっと。ごめんね、つき合わせちゃって・・・」
「いや、俺は別にかまわないよ」
「蓮君、先に行ってくれてて、いいんだよ?」
「真昼ちゃんはどうするのさ。一人で行く気なのか?」
「道は覚えてるし、大丈夫だよ。ここからだと、そう遠くはないし」
「まぁ、そうだろうけど・・・」
「?」
「い、いや、なんでもない。とにかく、続けていいよ。待ってるからさ」
「あ、うん・・・わかった・・・」
窓から射す光が、また祈りを始めた少女に降り注ぐ。
その様子を、光のまぶしさに目を細めつつ、少年は見守る。
・・・少し、頬を紅くしながら。
少女の祈りと少年の心の動揺は、まだ終わりそうにない
作品名:〈ユメ〉夢詩〈ウタ〉 作家名:千華