私のやんごとなき王子様 波江編
「すみません! お待たせして。さ、行きましょう!」
「うん! っていうか大丈夫? 息、あがってるけど」
全速力で走って来た潤君は、少しだけ息が弾んでいた。
「平気です! ちょっと急いで来ただけですから。それに――」
「それに?」
「校門にいたやつら、すっごい美羽さんの事見てたから。あいつらに見せる分なんて微塵もないですから!」
そう言って潤君はおどけたように微笑んだ。
その表情を見て私も自然に顔がほころぶ。
でもね、潤君――
あなただって、周りの女の子にすっごい見られてたんだよ?
去年までは潤君はどこか可愛さの残るあどけない顔立ちだった。けれど今はどこからどう見てもカッコイイ男の子に成長している。身長もまた伸びたんじゃないかな?
「僕、すっごい楽しみでしたよー!」
歩幅を私に合わせてゆっくりと歩く潤君。
私の事を‘先輩’と呼ぶのはやめてくれたけど、敬語はまだ直らないみたい。
でもそんな潤君を私は心から愛しく思う。
「私も。潤君とならどこへ行くのも何をするもの楽しみ!」
これからもずっとこうして歩いていこう。
手を取り合って、二人で――――
私のやんごとなき王子様 ――波江編―― 了
作品名:私のやんごとなき王子様 波江編 作家名:有馬音文