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私のやんごとなき王子様 波江編

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 すう〜、はあ〜……すう〜、はあ〜……

 本番を前にして舞台袖で私は大きく深呼吸を繰り返していた。
 最初は単なるオデット姫の友人役だった。それが今はオディールという大役を任されている。全身を緊張が走る。その証拠にさっきから手が震えている。

 ――でも、演じきらなくちゃ。じゃなきゃオデット役だったあの子に申し訳が無さ過ぎる。

 すう〜〜、はあ〜〜〜〜……

 私はもう一度だけ大きく息を吐くと、キッと舞台を見据えた。

「小日向先輩」

 ふいに声をかけられた。

「あ、潤君」

 従者の衣装に身を包んだ潤君の姿が目に入った瞬間、心臓が緊張とは違う高鳴りを始める。我ながら、結構余裕がある話だな――なんて思わず笑みがこぼれた。

「先輩はやっぱり凄いです。堂々としてて……。情けないですけど、僕は緊張しちゃって」

 少しだけ俯き加減にそう言う潤君の手を私はそっと握った。

「大丈夫」

 触れた指先から潤君の緊張が伝わってくる。

「大丈夫だよ、私もすっごい緊張してるけど――でもきっと大丈夫」

 そう言ってもう一度微笑む。

「はい!」

 そんな私を見つめ返すと、潤君はいつものあの可愛らしい笑顔を見せてくれた。
 その笑顔で、私の緊張までほぐされてしまう。

「さ、本番始まるよ。頑張ろう!」
「はい!」

 ブーーーーーーーッ

 開演を知らせるブザーが辺りに響き渡った。