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私のやんごとなき王子様 波江編

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 今日の練習は大変だった。何故なら衣装を着て、本番さながらの緊張感の中での練習だったからだ。

 昼にさなぎから衝撃の彼氏出来ました宣告を受けて、幸せな気分のまま午後の練習に入ったのだけど、暑さと苦しさで途中からはさなぎの幸せをかみしめる余裕も無かった。

 さらには部屋の中央で見つめ合うジークフリートとオデットのあまりの艶やかさ、その美しさに本当の物語の二人を見ているように惹き付けられた。
 二人の横に並ばなければならない自分を思うと、思わず足が震えてしまう。あの世界に入る事なんて許されないような気すらしてくる。
 まだ本番までは時間があるというのに、とてつもない重圧を感じた私は締め付けられたウエストみたいにしかめた顔でオディールの役を演じたのだった。



 熱くて辛い稽古もようやく終わり、衣装担当者と動きやすさなどの確認をして今日の練習は終わりとなった。

「ふうっ……」

 衣装からTシャツに着替え、早くシャワーが浴びたいと思っていた時、潤君がやって来た。

「お疲れ様です!」
「あ、潤君。お疲れ様〜」

 私の顔を見ると潤君はいつものように子犬のような瞳を向けてくれる。その顔を見た瞬間、一気に重圧から解放される心地がした。

「先輩、オディールの衣装すっごくお似合いでした! 僕、見てて感動しました!」
「ホント? でも風名君や亜里沙様の横に並ぶには、ちょっと苦しいよね」

 思わず苦笑しながら答えた私に、潤君は首をブンブンと大きく振った。

「そんな事無いです! 先輩は……本当に綺麗で……凄いです。急な代役だったのに」
「ふふっ、有難う。潤君にそう言われると、何だか気持ちがホッとする」

 そう言って私が微笑むと、潤君も同じように微笑み返してくれた。

「あ、先輩!」
「ん?」
「今晩、花火大会があるのはご存知ですか?」
「うん、今朝さなぎから聞いたよー」
「あのっ」

 そこで潤君は一つ息を吐いて、次の瞬間思い切ったようにこう言った。

「僕と一緒に見に行って貰えませんか!?」
「え! 私でいいの?」

 思わず私も反射的にこう答えてしまった。
 だって……私なんかより水原さんの方が、潤君の横には似合ってる様な気がしたから。

「先輩とがいいんです!」