私のやんごとなき王子様 風名編
「……ありがとう風名君。私、頑張る! 楽しんで演技が出来るように、もっと練習するから!」
なんだか元気が出てきたみたい。本当に風名君も利根君も優しいな。
「ああ、頑張ろうぜ」
私は風名君に向かって笑顔を返すと、元気よく立ち上がった。
「ようし! そうと決まれば練習あるのみ! 風名君、練習付き合ってくれる?」
「もちろん」
「利根君も励ましてくれてありがとう。私、頑張るね」
「頑張って、小日向さん。本番楽しみにしてるから」
奇麗な顔で微笑まれて、私は思わず照れてしまった。
「えっと、あんまり楽しみにされるとプレッシャーだから、こっそり楽しみにしててね」
「ふふ、分かった、そうするよ」
私と風名君は利根君と別れ、再び練習室へと戻った。
演技を命一杯楽しむんだ。高校生活最後の演劇祭なんだ! そうよ、精一杯頑張るって決めたじゃない!
練習室の窓から見たその景色の先に、島の輪郭がぼんやりと映った。
いよいよ到着するんだ。
私の胸は、一際大きく脈打った。
作品名:私のやんごとなき王子様 風名編 作家名:有馬音文