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私のやんごとなき王子様 風名編

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*****

「やっと終わった……」

 風名君や亜里沙様たちとの話が終わり、やっと落ち着いて自動販売機でジュースを買うと私はほっと一息吐いた。
 何だかもう通し稽古みたいに途中からなっちゃって、プロのすごさを目の当たりにしたって感じ。
 台本持って立った瞬間スイッチが入って、風名玲や桜亜里沙ではなく、ジークフリート王子とオデット姫になるんだもん。
 私はそんな本物の俳優のすごさを見せられて、圧倒させられるばかりで全く何も出来なかった。
 悔しいけどこれが現実。一般人とプロの差なのだ。

「はあ……」

 一息がため息に変わってしまった。

「小日向さん」
「―――あ、利根君」

 甲板のベンチに座っていた私に、利根華月君が声を掛けて来た。

「何だか疲れた顔してるけど、どうしたの?」

 隣りに腰掛けながら尋ねられ、私は先ほどの出来事を話して聞かせた。