ほほえみに乗せて
少しずつ遅くなる落日に、もう春がくるんだな、なんて思っていた。
「?」
不意に、くん、と引かれて振り返ると、袖口を引っ張った犯人は、何故か不安げにその瞳を揺らしていて。
少しでもその不安を取り除きたくて、微笑いかけてみた。
大丈夫だよ
いったい何が。
君の不安の正体がわからないから、励ましの気持ちが上手く言葉にならない。
唇を引き結んで俯く君の、袖を握り締めた手を、そっと解いてから包み込む。
そろそろと窺うように顔を上げた君に、笑顔を。
「……」
ゆるゆると口元が綻んでいく君を見て、自分がほっと安心したのがわかった。
何が君を不安にさせたの、君は安心できたの。
こうしてここにいるしかできないけど、それでも。
それでも、君の力になりたいんだと、伝わっているのかな。