繋いだ ぬくもり
何故か突然、置いていかれるような、そんな不安が胸を過って。
「?」
気がついたら、ズボンのポケットに突っ込まれた手の、その袖を、ぎゅっと握り締めていた。
気付いたキミは振り返って、どうかした? と微笑った。
行かないで
馬鹿馬鹿しい。
自分でもそう思う気持ちを、言葉に乗せることはできなくて、唇を噛み締めて俯いた。
やんわりと、キミに解かれた手は、心細さを覚えるより早く、キミの手の温もりに包まれる。
顔を上げると、にこにこと優しく笑うキミの顔。
「……」
それだけで、先の不安はどこかへ行って、心はぽかぽかと暖かくなった。
勝手に不安になって、勝手に安心して。
めんどくさいかもしれないけど、もう少しだけ。
もう少しだけ、キミの優しさに、甘えさせて。