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君の瞳にkissして~あらすじ~

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「…すげェ…」
新しくこの男子校・私立S高校に転校してきた藤崎司は、テレビでしか見たことの無いセレブの豪邸のような校舎を見上げて、溜め息をついた。焼きあがったスポンジケーキにたっぷりと塗られたカスタードクリーム。おまけに小さな窓がデコレーションしてある…−−−甘いもの好きの司の瞳には、この賢覧豪華な校舎でも、甘い甘いお菓子の家にしか見えないのだった。
(なんかうまそうかも)
なんて思いながら校門をくぐると、色とりどりの花壇に植えられた花たちが聖を迎える。チューリップやポピー、アネモネに金盞花…その他名も知らぬ花たちを目を細めて一瞥しながら、聖は大きく息を吸い込み、思い出しかけていた辛い幼少の記憶を拭い去った。

ーーー母親の顔は、憶えていない。
父親は6歳の頃交通事故で亡くなり、母親は10歳の頃彼を置いて出て行った。しかも、とんでもない置き土産を聖に残して。
ーーー200万円を超える借金。
それからは地獄だった。親戚の家に住まわせてもらった事は良いものの、何とかして借金を返さなければならない。そこで、聖は禁忌に手を染めたのだ。毎日毎日、売春。学校帰りにその店に寄り、女性の相手をしたのだ。365日、泣きながら相手を…そのせいで、今の彼は女性恐怖症なのだった。

そんな暗い過去を背負いながらも、聖は未来をキッと見据え、昇降口を目指したのだった。