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夏の涼

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 窓の外では、蝉がジワジワと鳴いていた。
僕は蝉の鳴き声から種類は判別できない。


「文紀ー、まあ、座れば?」

幼なじみの克夜は、足で雑誌を除けながらベッドに腰掛けた。
と、同時にテレビの電源を付ける。

「ビールなー。……俺らもあと2年くらいで飲めるようになるんだよな。」
「僕は、成人しても飲まない、かな。」
「えぇ?もったいないなー」

 テレビのCMでは、若いアイドルがおいしそうにゴク、ゴク、と
喉を鳴らしビールを飲み干していた。
僕はそれを見ながら萎びた座布団に腰掛けた。

今日みたいに、茹だるような暑さの時にはビールはたまらなくおいしいらしい。



「おっと、溶けちまうな。」

 そう言うと克夜は、下の台所から持ってきていたソーダアイスを袋から取り出した。
それは真ん中で二つに折って、二人で半分こするタイプのものだ。

「おら、半分こ。」
「ありがとう。」


 僕らもあと2年もすれば、ソーダアイスを半分こすることもなくなってしまうのだろうか。
2年後は、多分僕はまだ学生だろう。克夜は分からないけど。

「僕はビールより、ソーダアイスの方がいいな。」
「そんなこと言って、絶対数年後にはビールの方が旨いっつってんだよ。」
「ん……そうかもね。」


 克夜の言葉に悪意は無かったけど、少しだけ傷付いたこともいつか、酒の肴にされてしまうんだろうか。

作品名:夏の涼 作家名:片桐朝日