麦から
そう言って、眼鏡をかけた彼は泡立った琥珀色の液体を奨める。
「どうもすみません」
言いながらもう一人が受け取り、
「まずは遅れてきたんだ。駆けつけにグッといけよ」
笑いながら、遅れてきたらしい彼と同じくらいの年だろう男性が煽る。
「悪いな、俺は下戸なんだ」
「まぁ、下戸なら無理に飲む必要はないさ」
最初に飲むように奨めた彼は続けて言う。
「そう旨いものでもないしな」
笑いながら、冗談めかして。
音頭を取るのはもちろん、眼鏡の彼だ。
「さぁ、皆ちゃんともったか?」
「おう」「もちろん」
「なら、かんぱーい!!」
「かんぱーい!」
声が重なり、グラスをぶつける。
すると、ノック音。
「ちょっと、邪魔するよー……って、なにやってんの、あんたら?」
「え、あ、姉貴。なんの用だよ」
「借りてた本を返しに来てみたら……中学生にもなって麦茶を泡立ててなにやってんのよ。そろそろ恥ずかしいわよ?」
「うるせー! バカ姉貴!」