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ヘイ!ユー!

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 恋は八割勘違いと誰かが云った。そうしたら、今、自分はその勘違いで走っているのだ。

車のヘッドライトで夜空の星を探し当てることはできない。それとおんなじように、この広い世界の中で、好きな人を見つけるなんて、もう無理だ、と思っていた。大体一目ぼれなんて信じる性質でもないし。


バイトでへとへとに疲れて、ご飯を作る気にもならなくて、もうマックで済ませてしまおうと思って、入った瞬間。


(一目ぼれを信じないと云ったのは誰だ?)

(自分だ!)


心の中で一人クエスチョンアンドアンサーをして、舞い上がる心を必死に抑えようとした。


勘違いを、しました。


しどろもどろにてりやきセットを頼んで、オレンジジュースよりカフェオレのほうがかわいく見えるかな、とかアホなことまで考えてしまう。小銭があるのにわざとお札を出したり、そういう変なところで回転する自分の頭に驚きながら、それよりももっと気にするべきところがあるだろう、自分で突っ込みを入れたくなった。


(だって、恋っていうのは)

自分の知っている恋というものは、祝福されるもので、でも今自分がした恋は、祝福されるものなのか?

しっかりとおつりと、レシートを受け取って、その上タダで振りまかれているスマイルまでちゃっかりいただいてしまった。少し触れた手はお風呂のお湯みたいな、じんわりとしたあたたかさで。


カウンターを離れるときに目にしたネームプレートに、控えめに刻印されていた内田という文字をしっかり目に焼き付ける。

(うちだ、さん)


さあ、世の中の勘違いが得意な人たち。今から何をすればいいか教えてよ。

テンカウントのあとで、スタートダッシュ切ればいいの?




作品名:ヘイ!ユー! 作家名:おねずみ