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世界は、明日

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均衡が崩れる瞬間を知っているか。俺は見たことがある。頂点が瓦解する、それから周辺部が崩れる。ピラミッドは醜い過去の遺物となり、それが美しい姿であったことを後世に伝えない。
俺たちの頂点はあの時確かに沙良だったのに、あいつはいなくなってしまった。パズルのピースをなくしたように、俺たちはおろおろするしかなかった。何を決めるにも沙良を中心としてきたのに、いまさらどうやって自分の意思で物事を決めろというのか?
沙良は、王子様が連れて行ってしまった。不意に現れた、白馬に乗った王子様が、ドブねずみの世界にいた沙良をお姫様にしてしまった。
けれど、人魚姫が人間の世界になじめなかったように、沙良はきらびやかな世界の、面倒くさいもろもろのものに耐えかねて、結局俺たちのもとに戻ってきた。

沙良が帰ってきたことは喜ばしいことだったけれど、帰ってきたあいつはぼろぼろになっていて、パズルのピースは元のかたちとはすっかり変わっていた。磨耗した角が、空白が哀しい。
俺たちはどうしようもなくなって、一生懸命もとのピラミッドに戻そうとしたけれど、結局うまくいかなくて、へんてこな、ハリボテの、いつわりのピラミッドができた。
そうしてやっぱり頂点にたった沙良は、昔の沙良じゃなかった。


神様、どうしたら世界は元に戻るの?


天使がやってきて、世界を構築しなおした。



作品名:世界は、明日 作家名:おねずみ