夢みて、子供よ
そっと撫ぜる手の小ささにはっとする。何だこの生き物は。この手と柔らかい頬で俺に愛をささやく。ロリータすらなれない、嗚呼。
まぶたと格闘して、なんとか勝利を収めるとそこにはまるい輪郭。まるい瞳。
「なにやってんの?」
頚にそっとまわされた手のあつさに涙が出そうになる。
「何人殺した?」
殺し屋に、殺した人数聞くなんて野暮なんじゃねーの?笑って手をどける。
「さあな、三桁はいくだろな」
我ながらろくでもない人生だ。地獄にすらいけないかもしれない。
「そしたら、いまここでテツを殺したらあたしすごくたくさんの命を手にかけたことになるね」
「なんだその理論は。そりゃ新幹線の中でダッシュしてあたし時速120kmってくらい無理あるぞ」
笑った。目を細めて。やめろそれは女の笑い方だ。お前はまだ夢見るまつげの餓鬼さ。
「たとえ分かりにくいよ」
窓の外を見る。星が瞬く。あれは誰の命だろう。呟くと昨日のおねいさんだよと答えた。ぞっとしない。