バスケットガールでも、
口の中に指突っ込まれた。最悪。アクシデントとは云え最悪。なんど口をゆすいでも、あのえづいた感覚が忘れられない。
「あー、っと」
後ろから意味不明にでかい声が聞こえて、振り向くと指を突っ込んだ張本人がいた。
「ごめん、えと、」
「今井です」
「あ、うん。今井、ごめん悪気はなかったんだ」
「はあ」
イヤだなあと思った。目もあわせたことのない先輩。しかも男。うわー最悪。ポジションがかぶってなければこんなことなかったのに。ホントセンターやめたいと思った。フォワードがいい。こんな身体接触ないし。センターは、知らない人と密着するのが死ぬほどイヤだ。
「お前さ、」
がっと肩を掴まれて、顔を覗き込まれた。
「顔、怪我してねえよな?」
「はあ・・・、」
これだからイヤなんだ。触らないで欲しい。そっと肩に置かれた手を外したけれど、その意味するところはさっぱり理解していないようだった。
「いやーよかった!飯島に、女の子の顔傷つけてたらどう責任とるつもりなんだよって怒鳴られてさあ」
責任。アホか。飯島先輩はいい人だけどフェミニストを気取りすぎていて気持ちが悪い。
「あ、練習戻るんで」
「そか。ホントごめんなー」
そんな軽い口調で謝罪を口にしないで欲しい。それなら最初からするな。マンツーへたくそ。死ね。
ののしりの言葉を胸のうちで並べ立てた。
作品名:バスケットガールでも、 作家名:おねずみ