小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

うろんなイエス

INDEX|1ページ/1ページ|

 





 家に帰ると幼馴染がいた。一層黒く、一層でかくなっていた。
「ひさしぶり~」
「うん」
一生懸命テレヴィを見ている。ちらと見ると昔彼が好きだといっていた女優が映っていた。
「何してたん?」
「ん~、サッカーとか・・・・サッカーとかサッカー」
「サッカーだけやん」
「うん。だってほかにすることないねんもん」
「彼女は?」
「おるわけないやん。周り山ばっかやで」
「山ばっかじゃなくても無理か」
「いやいやいや。俺中学んときモテててんで」
知ってる。云うのが癪なので心の中で答えた。中学三年のとき追い越された身長も、俺が取れなかったサッカー推薦も、かわいい彼女も、何もかもが俺の劣等感を煽った。昔のかわいかった面影は無くて、あの甲高い声で名前を呼ばれることもないんだなあと思うと悲しいような、寂しいような不思議な気持ちがする。なのにいまだにこうやって遊びにくる彼を嫌いにはなれない。
「長崎弁になった?」
「いいや。結構県外の奴ばっかやからならへんわ」
「ほか」
テレヴィの中の女優が笑った。俺は愚かな自分が笑われた気分になった。
「そういえば、さ。xxxくん進路どうすんの?進学?就職?」
ここで進学といえばどこの大学?何学部?そこサッカー部ある?俺もそこにしようかなあと続き、就職といえば、どんな仕事するん?仕事場どこらへん?俺もそこにしようかなあと続きに決まっている。
「そうやなあ。キリストにでもなろうかなあ」
「何やのそれ?」
彼が笑って返した。
「いやいや結構本気やで。せやからほら、髪伸ばしてんねん。これでセンターパーツして茨の冠でもかぶれば完璧やん」
「そんでロンギヌスの槍で刺されて死ぬの?」
ちょっと悲しそうな顔をして問いかけるのではっとした。
彼はかわいいかわいい年下の幼馴染なのだ。
困らせるばっかりの駄目なおにいちゃんでごめんね。




作品名:うろんなイエス 作家名:おねずみ