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花言葉は復讐+続編-手繰る糸、繋ぐ先

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Last


 声がした部屋に駆け付けると、坂上は古びた写真片手に震えていた。
 
「何だ、その写真……」
 
 後ろから覗き込み絶句する。そこに写っていたのは、男女合わせて八人の子供達だった。
 後ろに並ぶ六人には見覚えが無いが、そのうちひとりはピアノの部屋にあった絵の女に似ている。そして前列で手を繋いでいるのは、幼い日の坂上と……先程俺を突き飛ばした女にそっくりな少女。
 
「……思い出したんです」
「え?」
「僕は昔、ここで暮らしていました。
母と、【センセイ】と、【のぞむお兄ちゃん】、【まことお兄ちゃん】、【あけみお姉ちゃん】、【ともはるお兄ちゃん】、【しょうじお兄ちゃん】、【れいこちゃん】、そして【えみちゃん】……。
僕達は家族でした。血の繋がりだとか考えもしないで、お互いが大好きで、ただそれだけだったんです。
そして、【センセイ】の難しい実験のお手伝いをして……すごく幸せだった筈なのに」
 
 時折言葉を詰まらせながらも、淡々と話す坂上の昔話。俺の知らない、坂上が忘れていた、その過去。
 
「それなのにどうして僕はこの家を出て行ったんだろう。みんなと離れ離れになって……すっかり忘れていたんだろう……」
 
 それを思い出そうとすると頭が痛む。坂上はそう言って俯く。
 疑問を解く鍵は必ずある筈だ。俺は手掛かりを探して辺りを見回し、やがてマホガニーのローテーブルの上に分厚い日記帳を見つけた。
 
「坂上」
「はい?」
 
 坂上を呼び寄せて、それを開いてみる。
 表紙には【えみちゃんのかぞくかんさつにっき】とあり、十三年ほど前の開始日付が記されていた。
 
 

○月×日
きょうはえみちゃんのたんじょうび。
しゅういちくんのままが、えみちゃんのためににっきちょうをぷれぜんとしてくれました。
なので、きょうからかぞくのかんさつにっきをつけようとおもいます。
 
×月△日
のぞむおにいちゃんは、うちゅうじんです。
ほんとうのすがたはみどりいろで、ちょっときもちわるい。
のぞむおにいちゃんはセンセイのけんきゅうのためにからだのいちぶをテイキョウしたので、ていきてきにからだをこうかんしなくちゃいけないんですって。
からだのひとはちょっとかわいそうだけど、キュウキュウなくナマクビは、とてもおもしろいです。
のぞむおにいちゃんのぼせいのスンバラリアでは、ちきゅうじんはショクリョウなの。
ナマクビはホゾンショクで、とってもおいしいってのぞむおにいちゃんはいってました。ほんとうかしら?
 
●月×日
きょうはれいこちゃんがネコちゃんになりました。
たましいをほかのどうぶつにうつすセンセイのジッケンはせいこうしたのです。
センセイはこんどはショクブツでためすといっています。
ネコになったれいこちゃんはとってもかわいいわ。
でもえみちゃんはいぬのほうがすき。
 
●月△日
ショクブツのじっけんもだいせいこう。ともはるおにいちゃんは、さぼてんみたいにスマートになったわ。
センセイは、こんどはむきぶつでためすそうです。どうなるかたのしみだわ。
 
△月○日
しょうじおにいちゃんは、木のおにんぎょうになりました。いまはおさかなみたいにすいそうにはいっています。
おにんぎょうになったら、ぜんせのきおくをとりもどして、しゅういちくんのことを「にいさん」とよんでしたってるわ。
おとこのこどうしでいちゃいちゃして、ふけつよ。
 
△月△日
きょうはまことおにいちゃんが、せいようのかっちゅうになりました。でも、これはしっぱい。おにいちゃんは、ほとんどうごけなくなってしまったわ。
かわいそう。
 
△月×日
あけみおねえちゃんが、えになりました。しかも、えになったり、えからでてきたり、じゆうにうごけるの。すてき。
えみちゃんもあけみおねえちゃんのようにえになりたいわ。
 
▲月□日
えみちゃんは、おおやけどをしてしまいました。
だから、ぼくがつづきをかきます。
えみちゃんは、ぴあののれっすんちゅうに、ぼくがけりたおしてしまったらんぷの火で、やけどしちゃったんだ。だから、ぼくがえみちゃんのみのまわりのせわをぜんぶしてあげます。
やくそくしたんだ。ぼくはいっしょうえみちゃんのどれいだからね。
 
▲月×日
えみちゃんはまいにち、やけどがいたいとないています。あけみおねえちゃんがおくすりをぬってあげても、れいこちゃんがきずぐちをなめてあげても、なきやみません。
ぼくはえみちゃんになにかしてあげられるでしょうか。ぼくのせいでからだがやけただれてしまったえみちゃん。ぼくはえみちゃんのためならなんでもします。
つぐないだけじゃなくて、ぼくはえみちゃんがすきだから。
センセイにおはなししたら、えみちゃんとぼくをひとつにしてくれるそうです。そしたらえみちゃんはもういたくないんだって。だから、ぼくはえみちゃんとひとつになります。
 
●月△日
えみちゃんとひとつになってひとつきたちました。でも、えみちゃんはときどきしかめざめません。
そして、ぼくはもうえみちゃんとおはなししたり、あそんだりできません。
ひとつになるのがこんなにかなしいなんて、ぼくはしらなかった。
きょう、センセイがしんでしまいました。あくまとのけいやくのだいしょうなんだって。
ぼくはお母さんといっしょに、よそのまちにいきます。しかたないことなんだって、お母さんはないていました。
でも、ぼくはかならずかえってきます。えみちゃんといっしょに、みんなのもとにかえってきます。
そのときまで、まっていてください。
さようなら。
 
しゅういち
 
 
 
 
 俺達は日記帳を読み終わると、茫然として顔を見合わせる。
 信じ難い話、悲しい結末。だがそれを受け入れてしまえばすべてのつじつまが合う。
 
 その時、車椅子の男が、甲冑が、水に濡れた木偶人形が、絵の女が、黒猫が、植物が、俺達をぐるりと取り囲んだ。
 
「おかえり修一。そして恵美ちゃん」
「再会できて嬉しいです、兄さん……」
「さあ、修一君、その男を殺すのよ」
 
 彼らが差し出したのは鷹匠が弟を切り殺したという、錆びた鉈だった。
 
「その男の身体、乗り心地がよさそうだからね」
 車椅子の男の首が緑のアンモナイトに変わる。
 
「生首の大合唱も聞いてみたいですしね、ひひひ」
 人形が顎をカタカタさせて不気味に笑う。
 
 そして坂上は鉈を拾い、それを俺に向けて振り上げた。
 間一髪、先程甲冑から奪った剣でそれを受け止める。
 凶行の主は坂上ではなく……【恵美】だった。
 
「おとなしく殺られなさいよっ!」
 
 その瞳は紅く、完全に正気を失っている。
 
「やめろ!坂上の身体で罪を犯すな!」
「修一は私の奴隷よ!だからこの身体も私の物よ!」
 
 華奢な身体の何処にそんな力が?と思うほど、重い衝撃が何度となく繰り出される。
 
「……坂上っ!」
 
 この女では話が通じない。俺は坂上に向けて呼びかけた。
 
「お前は【恵美】の奴隷じゃない!坂上修一というひとりの人間なんだ!
お前の身体はお前のもので、たとえ償いの為でも【恵美】に明け渡してやることはない!