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花言葉は復讐+続編-手繰る糸、繋ぐ先

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続編:#1


 あの山奥の洋館での一件以来、坂上への特別な感情を自覚した日野だが、ふたりの関係は以前より深まったものの、未だ想いを告げられずにいた。
 同じサークルでふたりきりになることも多い日野と坂上は、しばしばいい雰囲気にはなるのだが──その度に邪魔が入るのだ。
 
 
「お、今日は星が綺麗だな坂上」
「そうですね。冬の夜空って、他の季節より澄んで見えませんか?」
「ああ、そうかもしれないな」
 
 今日もサークルの活動で最後まで残っていたふたりは、白い息を吐きながら星空を見上げ、坂上が下宿するアパートへの道を歩いていた。
 あの一件で車を失った日野は当面新しい車を購入する予定はなく、自宅から電車で大学に通っており、坂上の下宿先がちょうど駅の最寄にあるために、坂上を送るのがほぼ日課になっている。
 
「それにしても、今日は寒いですね」
「今年一番の冷え込みだって、天気予報で言ってたからな」
 
 鼻の頭を赤くして、素手をあたためるように息を吹き掛ける坂上の横顔をちらりと見遣り、日野は自分の手袋を片方差し出した。
 
「ほれ」
「え、でも……」
 
 遠慮する坂上の右手に有無を言わさず手袋を被せ、空いた右手を坂上の左手に伸ばす。
 
「で、こっちはこうすればいい」
 
 指を絡ませ、ギュッと力を込めると、互いの体温が伝わってじんわりと熱を帯びる。いわゆる恋人繋ぎだ。
 坂上は金魚のように口をパクパクさせたが、結局黙ったまま、赤くなった顔を俯かせた。
 
「……誰も見てないさ」
 
 安心させるように囁く。
 坂上のアパートまでの道は人気がなく、街灯も少ない。夜は男でも物騒だというのでこうして帰路を共にすることになったのだが、こういう時にはかえって好都合だ。
 
「坂上……」
 
 日野は不意に立ち止まり、つられて足を止めた坂上をじっと見つめる。坂上はそんな日野をまばたきもせずに見上げ、次の言動を待った。
 今度こそ、と意を決し、日野は坂上の肩を引き寄せる。しかしその瞬間、夜の小径に女の悲鳴が上がった。
 
「イヤァァァァァ!」
 
 物凄い勢いで突き飛ばされ、日野は地面に転がる。
 
「私のカラダに触らないでよね、この変態ホモ眼鏡!
みなさーんこの人痴漢なんですぅ!
助けてぇー!
……誰も来ないわね、ちっ」
 
 出た。【恵美】だ。彼女の魂はいまだ坂上の身体に居座り、日野が坂上に手を出そうとするたびにしゃしゃり出てくる。
 おかげで、日野は坂上自身の気持ちが確かめられないままだった。
 
「残念だったな。この辺の住人は今の時間帯、ほとんど家を空けてるんだよ」
 
 よくもまあ毎回毎回、絶妙のタイミングで邪魔をしてくれるものだと、半ば感心し半ば呆れながら立ち上がる。
 
「それ以上、近寄らないでっ!修一は私の下僕なんだから。アンタみたいな変態ホモ眼鏡強姦魔には渡さないわ!」
「……はぁ。倉田、その身体はお前のもんじゃないし、坂上はお前の下僕じゃない。大体、俺はお前より年上だぞ。もう少し敬ったらどうなんだ」 
 
 馴れ馴れしく名前を呼ぶな──と本人から要請され、以来日野は彼女を姓で呼んでいる。年齢についてもその時に確認し諭したが、彼女の態度はいっこうに軟化する気配がなかった。
 いわく、
 
「うるさいわね、アンタみたいなホモ眼鏡に払う敬意なんてないわよっ!」
 
 とりつくしまもない。
 そのくせ、たまに部外者が通り掛かると猫を何百匹と被っておとなしい後輩を演じて見せるのだから、たまったものではなかった。
 
「……もういいよ。とりあえずお前らの部屋まで送ってやる」
 
 確かに肉体は坂上のものなのだが、主導権が【恵美】に移ると見た目まで変容してしまう。ただでさえ小柄な坂上よりも更に小さな【恵美】をこんな暗い道端に置き去りにすれば、たちまち本物の変質者に襲われてしまうだろう。そうなれば【恵美】はおそらく坂上と入れ替わる事で危険を回避する──冗談ではない。
 
「そうやってあわよくば修一の部屋に上がり込んであんなことやそんなことをするつもりだったんでしょ!送り狼なんていやらしい!」
「何とでも言え」
 
 【恵美】は口では文句を言いながら、日野が歩きだすと渋々ついてくる。武器を持たせなければただのか弱い少女だ。内心では夜の一人歩きが怖いに違いない。
 
 だが、この状態がこれからも続くのは困る。
 
 警戒しながら横を歩く【恵美】をちらりと窺いつつ、日野は溜息をついた。