お若いですねお三方
「あれは誰だい?」
梓裂は何の気はなしに一人の少年、見る人によっては青年と呼べるかもしれない、を指差した。細い腕で、赤い華を手折っていた。
梓裂の指を、観悦があわてておろす。
「あのお方は喫天慎さまです。お若く見えますがあなた様より二百はお年を召されています。どうかご無礼の無いように」
「それは仙とか天海に住まう人かい?」
「そうでございます。喫慎天さま、唯連舷さま、犀墺空さまが三人で天海を治めておいでです。三百年前からずっと、」
観悦は懐かしいものを見るような目で、喫慎天を眺めていた。
傍らで梓裂は何かあるなと思ったが、何も云わなかった。
物思いに耽る観悦など、百年近く共にいるが見たことが無かった。
もう一度喫慎天を見ると、傍らに年頃の娘の容姿をした女と、壮年にさしかかった頃合の容姿をした男がいた。
「あのお二方、男の方が唯連舷さま、女の方が犀墺空さまです」
へえ、えらく若く見えるものだと梓裂は心の中で思った。