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思い出すのはあなたのその、

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 僕はまいにち西通りを歩いて学校に通ってい。西通りは東通りに比べると道幅も狭くて、まだ舗装が住んでいない部分もところどころあり、なにより街灯が旧時代を思わせるような通りで、危ないといってママは僕が歩くのを嫌がった。けれども学校に行くのに一番近いのはこの道で、僕は悲しそうに怒った顔をするママの横をすり抜けまいにちこの道を通った。

けれど、

ほんとうはそれだけがりゆうではないのだ。


この道に面した古い家の庭に、僕の理由はあった。
二人のこども。きっと同い年くらいだろう。一人は女の子で、一人は男の子だった。二人ともうつろな目をして、何を見るわけでもなく見ていた。視線がさまようことはめったに無かった。女の子は釣り目で、かたちのよい額から続く目元は美しかった。男の子の方は綺麗なアーモンドアイをしていて、真っ黒のひとみが僕はちょっと怖かった。
ある日いつものようにそこを通ると男の子はいなかった。女の子が一人で、日陰にあるベンチ座っていた。
次の日もそうだった。
三日目、僕は女の子に声を掛けた。
「ねえ!」
大きな声で呼ぶと彼女は僕に気付き、近づいてきた。
「なに?」
女の子は意外と低い声をしていた。僕はもっと甘ったるい声を予想していた。
「君の隣にいた男の子は?」
「死んじまったわ」
女の子はぞんざいに云った。僕は彼のひとみの色を思い出した。なんだったろう。黒猫の毛並みのような、つやつやの黒だったはずだ。
「なんで?」
「知らない」
女の子は爪を噛んだ。
彼女の目元には、うっすらと隈が浮かんでいた。僕はそれを美しいと思った。
「そうかい。僕は君と、それからあの男の子とも仲良くなりたかったんだけどね」
「あいつはヨハンで、あたしは夏子よ」
女の子は銀色に近い髪の毛を日の光にひからせながら云った。
「君、ちっとも夏子ってかんじの顔じゃないね。それにあの子もヨハンってかんじではなかったな」
「そうね」
「君のしたまつげはながいね」
「ヨハンのしたまつげは黒々してながくて、あたし、あいつのしたまつげが好きだった」
僕たちの会話はひとつもかみ合っていなかった。しかししっかりとつながっていた。
「僕は君と友達になりたいと思うよ」
「そう、よろしく」
彼女は柵から手を伸ばした。僕は彼女とかたく握手をして、それからヨハンのしたまつげを思った。