眠るなら夜更けまで
永遠に目覚めない眠りを想像した。眠り姫はずるい。100年の眠りを経験しているのだ。私は一度眠れば千年先も目覚めることは無いだろう。
眠っている愛しい人の瞼のふちを、そっと指先でなぞる。薄い皮一枚、その奥にあの宝石の色をした瞳が隠れている。私の愛するうつくしい瞳が!
街が眠るとき、私は一人ぼっちだ。さみしいさみしいと心が叫び声をあげるが、私にはどうしてやることもできない。さみしいこころを一人撫でさすって、太陽が世界に目覚めを与えるのを待つばかりだ。
一人の夜、ランプをともして読書をする。ずっと昔の絵本だ。必ずハッピーエンドのものを探す。読み終えると、ホットミルクを一杯。もしかしたら今夜、眠りという未知のものが私に訪れるかもしれないという淡い期待が、ホットミルクと一緒に私の身体に消えていく。
夜はまだ明けない。もしこのまま、世界が目覚めることが無かったら。傍らで眠る人の頭をそっと抱え、想像に絶望し涙を流した。