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寒い国が好きなあなたへ

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 指の先の感覚が無い。鼻も凍るといううわさはどうやら本当らしいと浩輔は思った。マフラーの下にある口元の、きっと死んだような色になっていることだろう。
「君、こんなところに暮らしてたのか」
嘆息するような言い方になって、なんとも気まずく思った。
しかしエカテリーナは気にする様子もなく微笑む。
「そうよ!ここがわたしの故郷。ほら、星が綺麗でしょう」
指差す天蓋。漆黒の闇に無数のきらめき。浩輔はほおっと息を吐いた。
「すごい・・・、こんなに星を見たのは初めてだ」
「寒いところは星が綺麗なのよ。それにこんなにかわいいマフを出来るから、わたし寒いところが案外好きよ」
両の手を突っ込んでいる、マフラーを心持ちもちあげてエカテリーナは云った。
「そうだね。寒いと春の喜びを余計感じられる。ぼくも好きだ」
二人で凍るような寒さの中、エカテリーナの故郷を愛した。