僕らの反抗期
誰が彼を愛さないだろう、僕は思った。彼はいなくなったあの子に良く似ていて、まあそれは兄妹なのだから当然なのだけれど、とにかく綺麗なもので作られていた。
プラチナブロンドに近い髪は、それでもたしかに金色の美しさを持っていたし、ここいらではあまりみないアッシュグレイの瞳はどこか神秘的な感じがした。
そう、彼はかみさまに愛されるべき存在なのだ!
だのに、どういうことだろう。彼は神の御手からするりと逃れてしまった。きっとかみさまも悲しんだことだろう。愛しい愛しいこどもがひとり、自分を信じなくなったのだから。
「エルンスト、大丈夫さ」
僕はまだ小さくて、彼は14歳だった。彼は僕を赤ちゃんのように扱う。まあ、彼から見たら妹と同じくらいの年のこどもはみんな赤ちゃんに見えるだろう。
「明日にはかみさまの良い子に戻っているさ」
「君もかい?」
「俺?そうだな、かみさまはもう俺は要らないってさ。俺ももうかみさまはいらない」
酷い話だと思った。かみさま、なぜあの子を召し上げてしまわれたのですか。あの子が天上にいってしまったから、彼はあなたのことを信じなくなってしまいました。かみさま、あの子を返してください。僕たち、うんとやさしくします。僕、あの子をおよめさんにするって約束したんです。あの子、きっと白いケープが似合うんだ。だから、おねがい。
僕は祈った。でも知っていた。あの子が戻ってこないことを。
「僕がかみさまの良い子に戻りたくないっていったら?」
彼のアッシュグレイの瞳がきらりと光を持った。きっと、彼はこの言葉を望んでいて、それでいてこの言葉に罪悪感を持つんだ。