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詰めの一手・解決編

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「それは、建学の精神故に、ですよ」
 最後は口に出ていたらしい。『打たず』はやっと自分の思考に着いて来た事がうれしいのか、歯を見せない笑みを浮かべている。顔が近い。

『打たず』の指は生徒手帳を勢い良くめくり、最初の方にまで戻す。
「生徒自治の気風」
 大文字で書かれている文字を読む。そもそも、生徒自治が脅かされた為に、時の生徒会によって作られた生徒の自治組織が代理実行局だ。
「なんとなく、解った」
 でも、まだ言葉にならない。咽に引っかかっている感じ。

学校非公認だから力を持てた。つまり、
「社会のシステムで例えるなら、代理実行局は、官僚なんですよ」
 差し詰め、生徒会は国会か。なるほど、明察の意味が分かってきた。

「そうです。だから、いくら力を持っていても代表にはなれないのです」
 三権分立です、と続く。でも、それで言ったら代理実行局は行政権に当たりそうな。
「不満そうですね? 別に、無理に納得して貰う必要は無いのですが、どこが理解出来ないんですか?」

「いやね、三権分立で例えると、立法は生徒会だろうなってのは分かるんだ。教師が司法かな、とそこまでは予想出来るんだ。行政だけはどれが当たるのかなって」
 例えが悪かったか、と『打たず』は自問しながら、
「それは、各種委員会が当たります」
 と、断言した。あ、と『打たず』が気付く。

「この図が悪いんですね。これでは三権がすくみの状態に見えません」
 そう言って、組織図を叩く。

その後も、官僚って実は組織図的には、などなど一人ぶつぶつ呟いているが関係ない。
代理実行局が官僚という影のフィクサーとして君臨している、という記事は刺激的だろう。一泡に、二泡吹かせられる。しかし、もう一押し欲しいとこだ。
作品名:詰めの一手・解決編 作家名:浅日一