少女機械人形コーパス 第一幕
キュインキュインキュインッ!!<SE有>
己が体をうち震わせるヴィロネカート。
その白い球体が大きく伸び上がる。
左文字
『ジョエル!』
次の瞬間、デーケルターレの喉元に白い球体は、その体を絡みつかせていた。
ジョエル
「なっ……!」
伸び縮みし変幻自在に姿を変え、デーケルターレの喉にまとわりつく元白い球体。
その姿は、まるでデーケルターレに白い包帯を巻きつけているかのようだった。
ジョエル
「くっ……こほっ……! こ……の……!」
<SEガチャガチャとレバーを動かす音>
闇雲にモビリスレバーを操り、何とかこの白いヴィロネカートを剥がそうとするも、巻きつかれる一方で一切の抵抗を許されない。
ガリガリガリ
<SE有り>
指先に力を込め、絡みつくヴィロネカートの白い固体を掻き毟るも、わずかな白い細胞がボロボロと剥がれ落ちるのみだった。
左文字
『撤退だ! ジョエル! 撤退しろ!』
池峰
『撤退は無い』
左文字
『これは極めてイレギュラーな事態です! このままでは――』
池峰
『だからどうした。まだ何の成果も出せていないぞ』
左文字
『っ! ご子息の命の保障は出来ませんっ!』
池峰
『あいつもそれは承知の上で乗っているのだ。』
左文字
『ッ!』
野柳
『新しく出現したヴィロネカート。殲滅か凍結……それが出来なければ人類の明日は無い……。それは君も理解しているはずじゃないのかな?』
左文字
『しかし……! ジョエルはッ!』
ジョエル
「いいんです。左文字さん。……やって……やってみせますっ!」
左文字
『ジョエル?!』
ジョエル
「うわぁあああああぁあああぁああぁあぁ!!」
吼えて、ジョエルはその喉に未だ絡み続けている白い生命体を両手で掴んだ。
作品名:少女機械人形コーパス 第一幕 作家名:有馬音文