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ファイルⅡ

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四天王の日常





ルーク。

それが少年の名。

わけあって、とある組織に属している17歳。



*


組織と言っても、正直、ルークにはどんな組織で何をしているのか正確には分かっていなかった。
分かっているのは自分が四天王と呼ばれ、世界征服を狙っているということくらいだった。

世界征服。

響きだけは物騒なものかもしれないが、今ルークがしている仕事を見ると、果たして本当に世界征服を目論む組織なのだろうかと首を傾げたくなるのかもしれない。

「ねぇ、終わったよ」
まだ声変わりを迎えていない、少しだけ高い声でルークが高く積まれた紙の山の奥にいる人物に声をかけた。
「ん?もう、終わったのか?偉いな~、ルークは」
「わっ、ちょ、止めてよマインド!」
頭をわしゃわしゃと撫でられ、マインドより頭一つ低いルークが抗議の声を上げた。
必死に髪の毛を整えている姿をマインドは喉の奥で笑いながら、楽しげに眺めていた。
マインドはルークと同じく四天王と呼ばれている。
「もう僕を子供扱いしないでって言ってるでしょ!」
そう言いながら頬を膨らます辺り、子供ではないかと思ったことはルークには内緒である。
「で、あとは何手伝えばいいの?」
何を言っても無駄だと思ったルークは気を取り直して、室内をぐるりと見渡しながら聞く。
紙の山があちこちにそびえ立ち、酷いところは山が土砂崩れを起こしていた。
そのうちの何枚かを拾うと、どうやら何かの小説のようだ。
「『彼は突然に起ち上がって、彼女の細い手首を掴んだ』?マインドって小説かいてたっけ?」
「いや、それは仕事だよ。誤字脱字チェック」
「ふ~ん。『大人しくなった彼女に気を良くした彼は、ついに意を決して彼女の肩に手をかけた。そして、もはや意味をなさない服を一気に脱がせ――』あ!」
教育上よろしくないような展開になりかけたところで、背後からルークが手にしてた紙を誰かが奪った。
「・・・・・」
ルークが振り向くと、そこに立っていたのは黒いフードを目深にかぶった人物。
年齢はおろか、素顔さえ知らない。
この人物、彼女はルーク、マインドと同じく四天王の一人、通称死神と呼ばれていた。
「――おっと」
死神は音もなくマインドに詰め寄ると、死神と呼ばれる所以の鎌をマインドに突きつけた。
マインドは両手を挙げて降参のポーズをとりつつ、喉元にまで迫ってきた鎌をそっと押し返した。
「悪かったって、そう怒るな」
口数は少なくても、死神はルークを可愛がっていた。
そのルークの反応を面白おかしく楽しんでいたマインドに怒っているのだろう。
もっとも脅したところで、マインドの態度がかわるわけではないが。
「あなた達何やってるの?」
そこへ現れたのが、四天王最後の一人、キャラメルだった。
「ほらほら、早くしないとボスに怒られるでしょ」
肩まであるサラサラな髪をなびかせながら登場したキャラメルはルークの手を取ると、さっさと行くわよと、対峙したままの二人に手を振りながら部屋を後にした。
「・・・・俺たちも行くか」
肩をすくませながらマインドがそう促した。
表情の見えない死神がチッと舌打ちをしたような気がしたが、恐らく気のせいだ。
死神は音を立てずにすっといなくなり、マインドは部屋の電気を消して部屋を出て行った。

部屋の隅に残されたマインドのコンピューターがヴゥンと鈍い音と共に立ち上がる。

黒い画面の中央には赤い文字でMISSIONという文字が点滅を繰り返していた。




作品名:ファイルⅡ 作家名:青海