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水乃木蓮華
水乃木蓮華
novelistID. 11605
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ボクラノ 2

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朝の心地良い日差し、小鳥の囀り。
少年―水無月優輝と崎村翡翠は、他愛ない話をしながら、特に行く当てもなく、ぶらぶらと散歩をする。

朝、わざわざ早起きをして、二人の姿を見ようとする住人。
二人は、目に留まる人々全てに朝の挨拶をして、にこりと微笑みかける。

季節は春。
多少暖かくはあるが、まだたまに寒い風が吹くことがある。
そのため、いつも二人は厚着をするのだが、それでも今日は寒かった。
今日は散歩は程ほどにしようかという意見が一致し、来た道を引き返す。

家の前に着く。
するとその前には、一人の可憐な少女が立っていた。
待ちくたびれたように、家の前をうろうろして、両手を背中で組んでいた。
しかし、その少女は異様な雰囲気を持っていて、二人はその場で立ち尽くしていた。

しかしその時間も長くは続かない。その少女のほうから二人の存在に気付き、軽い足取りで駆け寄って来る。
「水無月くんと、崎村くんね?」
家には表札がついていない。それなのに少女は平然と二人の苗字を言い当てた。
やはりこの少女、普通の人間ではない―?

可憐な少女を警戒していると、少女は二人に背を向けた。
そしていきなり、誰かの名を叫ぶ。
「れーんー!!煉!!二人帰ってきたよぉー!」
「…?」
顔をしかめて、その“煉”という人物の姿を探す。
すると、厳しそうな男性の声が返ってきた。
しかし、それまでに掛かった時間は約3分。
「遅いぞ耶真、何故追いかけなかったんだお前は。アホか」
突然、耶真という名らしき少女に毒舌を吐く煉という人物。そして口論が始まる。
置いてけぼりにされた優輝と翡翠は、もういっそこの人物たちを放って家に入ってしまおうか、と思ったが、煉が落ち着きを取り戻して、一つ咳き込んでは、二人を真っ直ぐに見つめた。
「すまない、取り乱した。…俺は東堂 煉、名だけは、知っているだろう?」
 その名前を聞いた瞬間、二人は全身が凍りついた。
自分たちのような特別な力を持つ者―つまり魔術師の中で、“東堂煉”を知らない者はいない。
神に値する強大な魔力を持ち、人間、動物、一瞬の躊躇いもなく殺しにかかる。
そんな、冷酷と言われた、最強かつ最凶の男だ。
「……知っているようだな。お前たち二人に用がある。一緒に来てもらおうか。」
何の感情も持たない声と瞳に、二人は青い顔でびくっと肩を揺らす。
「まあそう警戒するな、殺しはしない。逆に…お前たちを必要としている。」
「……?」
「ね、君たち、ついてきてくれる?」
少女―耶真が二人にそう問う。
二人はお互いに顔を見合わせた後、小さくこくりと頷いた。
 そうすると、煉は何か含みのある笑みを浮かべ、交渉成立だ、と言ってパチンと指を鳴らした。

ぐらり、と世界が傾く。
まるで、暑さによって起きる貧血のように、立っていることすなままならなくなる。
この人物の前で、倒れたら駄目だ。駄目だ駄目だ駄目だ。
そう言い聞かせても、二人の意識はどんどん奪われていく。
「やっと、見つけた。」
そんな声を聞いたのが最後。二人はふっと意識を手放した。
作品名:ボクラノ 2 作家名:水乃木蓮華