Re:try
Prelude
湿った風の吹く街。
馴染んだ潮の香りさえも息苦しくなる。
目眩がする。
この輝いた世界に。
屋上には風を遮るものなど無い。
有るのは錆びた保護柵だけ。
後は空にある黒ぐらいだろうか。
風が吹き付ける。
それらは僕の体を吹き飛ばそうと、強く押してくる。
もっと吹くと良い。
もっと風が欲しい。
手を伸ばしても掴めない形が僕を包んでいる。
耳に流れ込むこの音を感じたい。
通い慣れた都市を見下ろして。
____もし。
ここから飛び降りたとしても、死なないとしたら。
僕は何度飛び降りるだろうか。
ただ、それだけを考えていた。