小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

love in the world

INDEX|1ページ/1ページ|

 
近頃、人と世界との関係についてよく考える。
私が生きていても死んでも、世界は世界のまま、なにも変わらずに流れていくのだと嘆くひとがいた。自分があまりに小さな存在で、世界の比重にさして関わりが無いと、それが酷く淋しいと、嘆くひとがいた。

私は考える。
世界は多重世界なのだと思う。
小さな世界がたくさんたくさん重なり合ってできたものがこの世界なのだと、私は思う。
私が生きているこの空間が、私と関わるすべてのものだけが、ひとつの世界なのだと。この時間がそれだけでひとつの世界なのだと。
私が死ねば、ひとつの世界が消滅する。この時間が終われば(はたして時間に“終わり”という概念が存在するものかどうかはともかくとして)、ひとつの世界が消滅し、次の世界が始まる。たくさんの世界がそうして発生と消滅を繰り返してきた。ブラウン管の中に見える架空の物語だって、少なくともその場では現実で真実で、それ自体でひとつの世界だ。
いろいろな世界は少しずつ重なり合って、そうしてできた大きな集合体が私達の世界だ。


ならば世界と世界の間には一体何があるのだろう。
私は考える。

世界と世界の間は細胞と細胞の間の組織液のように、“想い”で満たされているのだろうと。想いだけが世界を渡る。想いだけが世界を繋ぐ。想いだけが世界を断絶させる。
世界の間に充ち満ちている想いが、どうか哀しみでなければいいと、私は願う。怒りでも苦しみでもなければいいと、私は願う。





恋人は私の黒目だけをじっと見つめて、それからただ笑って、
「愛だよ。」
とだけ言った。頬にキスをひとつ落とした。


彼との関係が終わるとき、またひとつの世界が終わるのだろう。私にはそれが哀しい。
そう言ったらやさしい彼は何も言わず、もうひとつだけキスをくれた。





作品名:love in the world 作家名:ナツ