短文集
◎草原
草原がある
どんな方向を向いても地平線が見えてしまう広い草原
木の一本も見当たらないような何もない草原
青年がその草原に立っていた
青年はとてもカジュアルな服を着ていた
手に持っているコンパス以外は何も荷物はない
どうやってそこに来て、何故そこにいるのか全くの謎だ
青年はただ、東を見つめていた
太陽は何時間もずっと真上にあって動いていない
だから太陽が沈むのを見ているわけではないようだ
ただ、真東を見つめている
更に何時間かたった時、青年は歩き出した
今度は西の方向だ
ただ、真西へ向かって歩く
いつまで歩くのか
どこまで歩くのか
何故歩くのか
…そんなことは青年も知らない